「こんにちはわー、何聴いてるんですか?迫力のある音楽ですね。」

「オルフの『カルミナ・ブラーナ』です。」

「これ、クラシックなんですか?」

「1936年にオルフが作曲したんですが、まあオーケストラが演奏しているのでク

   ラシック音楽ということになりますか。」

「えっ?」

「そもそも、クラシック音楽ってポピュラーミュージックやジャス、ロックと区分け

   するための便宜上の呼び名なんで、例えばベートーヴェンがクラシック音楽を書こう

   とした、ということはない訳ですからね。」

「じゃあ『カルミナ・ブラーナ』を説明するとしたらどうなるんでしょうか?」

「オルフは『世俗カンタータ』として作曲していて、歌詞は19世紀のはじめにバイ

   エルン修道院で見つけられた詩歌集の写本が元になっていますが、11世紀から13

   世jこ頃に書かれたもので、内容は恋愛から酒、性に至るまで多岐に渡っています。」

「正に世俗的なんですね。」

「オルフはそこから何曲かを選んで使っています。副題も付いていて『楽器群と魔術

   的な場面を伴って歌われる、独唱と合唱のための世俗的歌曲』なんですね。だから本

   来は舞台形式で演奏されるべき曲なんですが、今ではコンサート形式で演奏される場

   合も多いです。」

「面白そう。」

「曲を順に追っていきましょう。」

   第1曲”おお、運命よ”

    さっき聴いてた所で、運命を呪うような歌詞になっています。

   第2曲”運命は傷つける”

    ”頂きにはる王よ、破滅を恐れよ”と歌い、曲調は第1曲の雰囲気を引き継いだよう

    な音楽です。

   第3曲”美しき春”

    で春の訪れを歌いますが、どこか悲しげな音楽です。聴いてみましょう。

 

「中世の音楽って感じです。」

「オルフは『フーガやソナタといった純音楽の可能性は18、9世紀に使い果たされ

   てしまった。劇場音楽こそまだ未開拓の世界だ。』、また『私が過去の素材を使うの

   は、その現在も失われない活力を表現したいからだ。』と語ってます。」

第4曲”太陽はすべてをいたわる”

    バリトン独唱が入ります。春を喜びながら恋に懊悩する若者の切ない心を歌いあげ

    ます。

   第5曲”春の訪れ”

    合唱が春の訪れの喜びを歌います。聴いてみましょう。

「何だか楽しくなってきました。」

第6曲”踊り”

    オーケストラだけの楽しげな踊りの音楽です。

   第7曲”気高き森”

    合唱が加わり春の喜びを歌います。しかし同時に恋焦がれていた人がどこか遠くへ

    行ってしまった悲哀が歌われます。

   第8曲”店の人よ、私に紅を下さい”

    若い男の恋心を誘うため、頬紅を下さいと合唱が歌います。どんな曲が聴いてみた

    くなりますよね。

「合唱が静かにゆっくりと漂うように歌うところも素敵ですね。」

第9曲”輪舞”

    オーケストラだけの静かな円舞曲に続いて力強い合唱が”ここで輪になって踊るのは

    乙女たち、夏の間は男を欲しがらない”と歌うのに続いて静かに”おいで私の恋人

    よ”と歌います。

   第10曲”世界が我が物となるとも”

    金管のファンファーレから”全世界の我が物となったとしても、イギリス女王をこの

    腕に抱けるならすべて投げ出そう”と豪気な歌が歌われます。聴いてみましょう。

「こんな感じの日本の歌、ありましたよね?」

「ありましたねー。題名が浮かんできませんが。」

「さて、ここまでで第1部が終わり、第2部に入りますが”居酒屋にて”と題されたよ

   うに酒に酔った男の歌が続きます。」

   第11曲”怒りに、心収まらず”

   第12曲”かつては湖に住みしわれ”

    テノールがハイトーンで”昔は白鳥だった”と歌うと合唱が”何てことだ!今じゃ真っ

    黒にローストされる身!”と答えます。

   第13曲”予は大僧正様”

    バリトンが”我こそは怠け者の楽園の僧正”と歌います。

   第14曲”われら、居酒屋にあっては”

    合唱が”我らは居酒屋で来世を気にせず、賭け事に汗をながす”と歌います。第2部

    の終曲に相応しい勢いのある曲です。聴いてみましょう。

「ここから第3部”求愛”になります。」

   第15曲”愛の神はいずこにも飛び来たり”

    少年合唱とソプラノ独唱が”若い男女の恋心を優しく歌い上げます。

   第16曲”昼、夜そしてあらゆるものが”

    バリトン独唱が独特のハイトーンで恋の嘆きを歌います。

   第17曲”赤い胴着の乙女が立っていた”

    ソプラノがオペラのアリアのような美しい歌を聴かせます。聴いてみましょう。

「本当に綺麗な歌声ですね。」

第18曲”私の心はため息みつ”

    バリトン独唱が”私の心はため息で一杯だ”と歌い合唱が”恋人は来ない”と相の手を

    入れます。

   第19曲”若者と乙女がいたら”

    無伴奏で合唱が”もし若者と娘が二人きりで小部屋にいられたら幸せ”と歌います。

   第20曲”おいで、おいで”

    ピアノの前奏に続いて合唱が”おいで、おいで、来ておくれ”と歌います。

   第21曲”揺れ動く、我が心”

    再びソプラノの美しい歌。

   第22曲”楽しい季節”

    ”歓喜の時が来た!”と合唱とバリトン独唱が高らかに歌います。

   第23曲”私の愛しい人”

    ソプラノの一番の聴かせどころ。聴きましょう。”夜の女王”並の高音を響かせま

    す。

「”夜の女王”って?」

「モーツァルトのオペラ『魔笛』に登場する夜の女王が歌う超絶技巧のアリアがあっ

   て、その高音域の使い方が凄く有名なんです。」    

「ここからフィナーレ。ますは”ブランチフロール(白い花”とヘレナ”と題された部分

   です。」

   第24曲”たとえ美しきものよ”

    堂々とした曲。続いて第1曲”おお、運命よ”が再現されて終局となります。続けて

    聴いてください。

「独特の雰囲気がありますが、楽しめました。次の曲も楽しみにしてますね。」

 

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 「この記事が新たな出会いのきっかけとなれば幸いです。」