「クラシックはこれを聴け」、今回はベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ第5番、第6番、第7番」です。
この3曲はは1798年作品10として書かれたものです。
作品10ー1「ピアノ・ソナタ第5番」はハ短調で書かれていて、後の「第8番”悲愴」との比較で、”小悲愴”と呼ばれることがあります。またベートーヴェンはこの曲で3楽章制を取り入れました。
「ピアノ・ソナタ第5番」
第1楽章アレグロ モルト・エ・コン ブリオ (活気を持って、極めて速く)。冒頭の第1主題、決然とした出出し、随所に挿入される休符が
劇的な効果を生んでいます。この曲の紹介はフリードリヒ・グルダのピアノで。私はグルダの全集を持っているので、ベートーヴェンのピア
ノ・ソナタはグルダで聴くことが多いです。
第2楽章アダージョ モルト(極めて緩やかに)。ベートーヴェン特有の深みのある美しさがある緩徐楽章。「第8番”悲愴”」のように一聴
耳に残るメロディは聴かれませんが、同じ気分の音楽になっています。
第3楽章フィナーレ、プレスティッシ(極めて速く)。駆け抜けるような楽章。冒頭主題の勢いそのままに最後は静かに終わります。
作品10−2「ピアノ・ソナタ第6番」はこの3曲の中では少し個性が薄い気がします。「交響曲第6番”田園”」と同じへ長調です。緩徐楽章を持たない3楽章制を採っています。
「ピアノ・ソナタ第6番」
第1楽章アレグロ(速く)。軽快な軽い感じの主題から始まります。
第2楽章アレグレット(やや速く)。長調の第1楽章に対し短調で書かれているので、軽快ながらちょっと暗い雰囲気を持っています。
第3楽章プレスト(速く)。冒頭フーガのような開始。目まぐるしい音楽が止まることなくあっという間に終わってる感じ。
作品10−3「ピアノ・ソナタ第7番」は他の2曲が3楽章制を採ったのに対し、従来の4楽章制になっていて重厚な感じを受けます。次の第8番”悲愴”」等の有名な曲に引けを取らない魅力があります。
「ピアノ・ソナタ第7番」
第1楽章プレスト(速く)。印象的な出だしを聴くだけで「いい曲だなあ」と感じます。
第2楽章ラルゴ・エ・メスト(悲しげに、緩やかに)。ベートーヴェンがこの楽章のことを、「悲しんでいる人の心の状態を、さまざまな光
と影のニュアンスにおいて描こうとした」と語っています。またベートーヴェンはこの後の「ピアノ・ソナタ」でラルゴの楽章を書きません
でした。パウル・ベッカーという人が、「ラルゴは最もよい成分を搾取されて、結局ベートーヴェンにより捨てられた」と表現しています。
ベートーヴェンがここまで重たい緩徐楽章を書いたのは他に知りません。
第3楽章メヌエット、アレグロ(速く)。第2楽章の闇に陽の光が差し込むような開始。
第4楽章ロンド、アレグロ(速く)。何かを問うような印象的な主題から始まる。最終楽章に相応しい堂々とした音楽。
この中から一曲というとやっぱり「第7番」です。ピアノはウラジミール・ホロヴィッツ。ヴァイオリンのハイフェッツと並び称される名人です。
最後までお付き合い、ありがとうございました。