「クラシックはこれを聴け」、今回はレスピーギの交響詩「ローマの松」です。

 

イタリアの作曲家、オットリーノ・レスピーギがローマ三部作と呼ばれる作品を書いたのは1916年から1928年のことです。「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭裏」の順に書かれました。

 

この曲は4つの部分、「ボルゲーゼ荘の松」「カタコンバ付近の松」「ジャニコロの松」「アッピア街道の松」が切れ目なく続けて演奏されます。

 

1926年にレスピーギ自身の指揮でフィラディルフィア管弦楽団とこの曲を演奏するにあたり、プログラムに「『ローマの松』では、私は、記憶と幻想を呼び起こすための出発点として自然を用いた。極めて特徴を帯びてローマの風景を支配している何世紀にもわたる樹木は、ローマの生活での主要な事件の証人になっている。と書いています。

 

つまり、レスピーギは松そのものを描いたのではなく、そこから連想される古代ローマの風物を表したということです。

 

この曲の最大の聴き物は何と言っても、最後の「アッピア街道の松」です。最後徐々にクレッシェンドしていく音楽の圧倒的な物量に興奮させられない人は居ないと思います。

 

この曲にはカラヤンとベルリン・フィルが1984年の来日時に、大阪シンフォニーホールでの名演が動画で観られます。音質としては音だけの動画に譲りますが、「アッピア街道の松」の部分だけをまずご覧下さい。

 

演奏が終わった後、カラヤンも満足そうな笑顔を見せています。

 

レスピーギはそれぞれに説明文を付けています。

 

「ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子供たちが遊んでいる。彼らは輪になって踊り、兵隊遊びをして行進したり戦争している。夕暮れの燕のように自分たちの叫び声に昂闘し、群をなして行ったり来たりしている。突然、情景は変わり、第二部に曲は入る。」

 

「カタコンバの入り口に立っている松の木かげで、その深い奥底から悲嘆の聖歌がひびいてくる。そして、それは、荘厳な賛歌のように大気にただよい、しだいに神秘的に消えてゆく。」

 

「そよ風が大気をゆする。ジャニコロの松が満月のあかるい光に遠くくっきりと立っている。夜鶯が啼いている。」

 

「アッピア街道の霧深い夜あけ。不思議な風景を見まもっている離れた松。果てしない足音の静かな休みのないリズム。詩人は、過去の栄光の幻想的な姿を浮かべる。トランペットが響き、新しく昇る太陽の響きの中で、執政官の軍隊がサクラ街道を前進し、カピトレ丘へ勝ち誇って登ってゆく。」

 

それでは同じコンサートの音源でお聴き下さい。全曲で20分程度です。

 

最後までお付き合い、ありがとうございました。