リリィの声
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セックス

いい加減、断ち切らなきゃいけない。

愛はなくて、
でも、
これであの人の感触を忘れられる。

そうだといい。

人は新たなものに触れることよって、忘れられるものがある。


街が変わっていくと、
それまであったものが思い出せなくなる様に。


セックスをした。


新しい感覚。感触。


もう求められることのない体。


求められた一瞬。


これきりのセックス。


互いに思い出すこともなく。
跡形も残らないセックス。


終わってからの
どうでもいい会話。


がっちりとした胸板と、筋肉が隆起した腕の中で眠る時の、虚しさ。


それでも、
もう忘れてしまったあの人の温もり。


腕の中から寝たふりをして寝返りを打ち、


反対を向いて涙を堪えた。

後ろから抱きしめられる温かい腕が、
髪を撫でる手が、
髪にそっとキスをする唇が、

どれもが、あたしの心を締め付けた。


愛に溶けてなくなったあたしが、


あの時確かに存在していたことを、


思い出して、


耳元に聞こえた寝息を確認してから、

堪えた涙が流れた。


愛に溶けてあたしはなくなった。


体も心も全て。


溶けてなくなった。


虚しさは当然だった。


泣いたままいつの間に合か眠っていた。


目が覚めたとき、
彼は消えていた。


あたしはひとり、
熱いシャワーを浴びて、


ベッドの下に落ちていた
合成樹脂を見て、


部屋を出た。


外にでると、
男女が手を繋ぎ、
歩いている。


何組も。何組も。


信号待ちでキスをしてる。

何かのツアーの様に、
ホテル街からチェックアウトの時間が同じだから、
手を繋いで集団で駅に向かう。


みんな手を繋いで歩いている。


あたしはひとり、それをみながら同じ道を歩く。


数年振りのセックスは、
虚しさと、


その不思議な光景が残っただけだった。


駅までツアー団体の様に向かい、


数組の男女が名残惜しそうに、駅でキスを交わしている。


愛らしい姿だった。


素直な心を剥き出しにした人間らしい姿だった。


抱きしめあっている男女を横目に、
あたしはひとり、電車に揺られ、
ただ疲労と虚しさと共に眠っていた。


駅に着いて電車から降りたとき、
眩しい夏の陽射しに、
目眩がした。


そして、


何してんだ あたし
って

自分を嘲笑った。

夏の燃える陽射しに
溶けてなくなりたかった。
愛に溶けてなくなったあたしは、

今は夏の陽射しに
溶けてなくなりたかった。

最近毎日

夢に出て来る。
なぜ?

もうちゃんと自分の中の中で

奥深くで

ありがとう
さようなら

と言った。



それから数日、一日の中、あの人を思い出す時間は消えた。


そうしたら、
その後、毎日夢に出て来る。

じゃあなって終わる夢。
あとは、すれ違い際に
おうって
言い合う。
だけの夢。とか。


なぜ?



もうずっと
会っても話してもない。

なぜ?


わからないや。
全然わからない。

でも、


いいや、わからないから
わからない。

それでいいやって思う。

それでいいや。


この夢に意味があるとしても、わからなくていいや。
何もかもに意味があるって思うけど、

全部の意味が分かる訳じゃないし。

それでいいやって。


そう思う。

なりゆき

成り行き=物事が移り変わり、進んでゆく様子。
その過程。
また、その結果。


そう、

ただの成り行きだったのだ。


闇に放り出し、封じ込めた。己のみ晴れやかな清々しい中に存在し続ける為。


私は、成り行きで、闇の中に封じ込められただけ。


遣りっぱなしで。
成り行きで。


闇の中に放り出し、終には、葬ろうとしている。


私を、葬ろうとしている。闇の中で、存在していることさえ、あの人には害なのだ。
私は害なのだ。


あの人は幸せ。
その為には、私の存在が妨げになる。
無論、私を無慈悲に扱うのは、当然なのだ。
当然なのだ。


全て、成り行きだ。

成り行きだ。
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