酒は"養生"でもあり"流動食"でもある。
皆様、新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお付き合いください。
年明けは、正月らしく酒の話題から。
ホリスティック医学の権威、帯津良一医学博士はかつて「酒は養生である。養生は毎日すべし、従って酒は毎日飲むべし」という主旨を講演の中で話されたことがあります。
これが酒飲みにとって、まさに絶好の論拠として利用されたと苦笑されていたことがあります。
他方、元大阪医科大学学長、山中太木医学博士は「酒は流動食である。それは凡人にとってではなく、大人(タイジン)にとって...」と話されたことがあります。
いずれも含蓄のある言葉です。
それは、「ほどほど」をわきまえることが出来る人にとっては"養生"にもなり、また"流動食"にもなり得るということなのでしょう。
確かに適量の酒は(各国の酒を含めて)、健康長寿に役立つことが判っています。
50万人近い人々を九年間に渡って追跡し、アルコール摂取量と寿命との関係を調査したデータによると(調査対象とした飲料は、ビール、ワイン、ウイス キー。いずれも一杯をアルコール約12g換算)、一日に一杯飲む人が一番長生きして、次に時々飲む、二杯、三杯、四?五杯と順に続き、飲まない人は六杯以 上の人とほぼ同じ位という結果が報告されています。
また、心筋梗塞や脳卒中などの血管障害では、アルコールを全く飲まない人より、多少にかかわらず飲んでいる人の方が死亡率が低い傾向が見られました。
適度のアルコールは血管を広げ血流を良くし、リラックス出来てストレス解消に役立ちますので頷けるところです。
だからといって飲めない人も飲みなさい、という意味では決してありません。
また、適量にも個人差があることも忘れてはなりません。
室町時代の狂言「餅酒」に登場する"酒の十徳"は素晴らしいのでご紹介します。
1.独居の友。
2.万人和合す。
3.位なくして貴人に交わる。
4.推参に便あり。
5.旅行に慈悲あり。
6.延命の効あり。
7.百薬の長。
8.愁いを払う。
9.労を助く。
10.寒気に衣となる。
東京農業大学教授、小泉武夫博士は、「酒は民族の誇り」(「発酵」中公新書)と書いています。
あらゆる民族はそれぞれ誇るべき酒を持っています。
私も 酒飲みの一人として、皆様に日本酒、焼酎をお薦めしたいのです。
何故かというと、洋食より和食をお薦めしたい理由と同じです。
酒は食事の一部ですから、ワイン、ウイスキーには肉やチーズ、ハム等が良く合い、鯖のみそ煮は合いません。
そうすると肴の質(特に脂肪の質)からして、 やはり我々日本人には和食の肴に日本酒、焼酎なのです。
日本酒は「後に残る」からと敬遠される方もありますが、その場合は、醸造用アルコールの入っていな い「純米酒」を常温もしくは人肌で飲んでみてください。
長寿世界一の泉重千代さんは、百歳過ぎても黒糖焼酎のお湯割り1杯を毎日欠かさなかったそうです。
酒は、適量を守ってこそ"百薬の長"なのですが、適量を超えるとご承知の通り、"万病の元"になります。
ブルガリアの諺に「一杯目は健康の為、二杯目は 喜び、三杯目は心地よさ、四杯目は愚かさの為」とあります。
私はこれに「五杯目は医者の為」を付け加えたいと思います。
最後に、正月らしくお屠蘇(とそ)の話題を。
お屠蘇は、清酒やみりんに屠蘇散(防風、桔梗、百朮、山椒、桂皮などの漢方生薬)を漬け込んだものです。
胃腸の働きを整え、風邪の予防に役立ち、これを年頭にいただくことによって一年の健康祈願としたのです。
だんだんすたれつつありますが、このような古き良き習慣は是非とも守り育てていきたいものです。
酒は飲むべし、飲まるるべからず!
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