その本を初めて手に取ったとき、

ボクにはその本がとてもきれいに見えた。

なんともいえない、喜びがこみ上げた。

いま思い返せば、それは波動とでもいえたのかもしれない。


夜、眠れなくなっていたボクは、

聖書を読んだり、お経を読んだりしていた。

だけれども、けっして心が落ち着いて、

眠りにつけることがなかった。


それなのに、『運命の貴族となるために』を手にしたとたん、

ふっと気が楽になったんだ。


わけもわからぬまま、

ページを開いた。

その主人公の様子というのは、

まさにボクそのもののようだった。


疲れ果て、絶望しつくした挙句、

立ち上がることも、寝ることすらできない。

主人公の姿に、そのままボクの姿を映した。


彼は、マスター、つまり

自分の人生を自分の力で支配できる者の存在を知り、

その知恵を学ぶのだ。


ボクは、不思議とその本を読んでいるうちに、

聖書やお経では得られなかった、

心の平安を感じた。

同時に、なんだか、久しぶりに、

力強い興奮を覚えはじめていた。