目的地のある電車の座席に残る影は
二人分だけの指定席の幸せ
過ぎた景色が色とりどりの線となり
消えていく瞬間に
涙をこぼす恥じらいを
君に隠すようにして

君のためにわたしは嘘をつき
わたしのために君は嘘をついてきた
お互いの言葉で分かり合える距離をはかり
背骨の硬さと手のひらをお互いに感じ
今の時間を信じて眠りながら
微かな寝息を聞いて愛を感じていた
それはきっと真実

息を吐くように嘘をついて
息を吸うように嘘をもらってきた
あたり前のことを意識することもなく
二人の時間を煙草の煙とともに過ごしてきた
たくさんの嘘の背中には
恥ずかしいくらいの愛がある
それはきっと真実

漆黒の闇のなかで瞬きする瞳に
落ちてくる星はないけれども
流れていく星を見れたなら
そこに真実があって
尻尾のように嘘もついてきている
目を伏せるほどの恥じらいが
頬をくすぐっている