夏休みが終わりかけていた。小学五年の私は、幼稚園の時以来の東京に興奮し、田舎に帰りたくなくて、東京駅で泣いていた。
ひげもじゃの大学生が話しかけてきた。
「僕が、君を見かけ、話しかけたのは、必然かい? それとも偶然かい?」
そういう青臭い話にはつきあう気はなかったが、私も、たまたま感傷的になっていたので、答えた。
「どちらでもありません。なるようになっていくと思います」
「なぜ泣いているの?」
「説明できません」
「それは、降服宣言だな」
私はそこから走って逃げた。東京駅の中を突っ走った。