母は、私には男は七人いたといった。
だが、性交渉をしたのは私の父とだけだった。
少ないなあ、と私はせせら笑った。
それぞれの思い出を聞くのに何時間かかったことか。
母が死ぬ数時間前、気息奄々、必死で私に言ったのだ
あたしの、とおい、あいごころ、あたしの、とおい、こいごころ。
きよひこのことか、きよひこか? パパだろ?。
うなずく。大きくうなずいて、せきをした。
あっあ、あたしの、とおい、あいごころ、あたしの、とおい、こいごころ。
私は、てをにぎっている。
あたしの、とおい、あいごころ、あたしの、とおい、こいごころ。
私はてをにぎっている。にぎりしめている。
あたしの、とおい、あいごころ、あたしの、とおい、こいごころ。
くりかえした。くりかえした。くりかえした。
そして、しんでしまった。