孝ちゃんは、レズ友である重ちゃんと、全く同じの格好をさせられる。

何人もの女たちが、化粧と着付けにたずさわる。

白塗りの顔に、目じりの紅、頬の紅、唇の紅。

いざ立ち上がろうとしてもできない。とっても重い。

ぎんぎらぎんの文金高島田。

私は、その写真を見たことがある。

正面から撮ってはいけないことになっていたそうで、うなじがあらわな花嫁衣裳だ。

生唾飲み込む妖艶さだ。

さて、孝ちゃんと重ちゃんは、老女中に左の手を引かれ、右手で袖をつかんで自分の顔を隠し、下を向いたまま大広間に入る。

三つ指突いて、男の前に伏し、ゆっくりと頭を上げた。

はじめて見る男だった。

お坊さんではなく、神官の息子だ。帝国海軍の将校である。国境警備にたずさわっている。父親がみそめたのだ。

軍艦が氷に閉じ込められた時、危ないと止める乗組員たちの声を振り切って、氷の上を歩きながら、こっち、つぎはこっち、と、船の行き先を指示したそうな。

その男は、重ちゃんばかりを見ている。

全く同じ格好をしておいて、選ばせるのだ。

面白い風習だ。起源はどこなのか。

孝ちゃんは、男が重ちゃんばかり見ているので、重ちゃんを選んで、失敗して、帰ってくれるだろうと期待していた。

判定の時が来た。

周りに坐る人々が、しんとなって、見つめている。

沈黙の時間がしばしあった。

その男は、顔をそむけながら、孝ちゃんを指差した。