マダムTが舞台の台本を持ってきた。

私と彼女と、幾人かぶんずつ役を振って、読み合わせを試みた。

書かれている科白が、誰が言ってもいいような代物なので、演技者それぞれの声の高低、しゃべるスピード、癖等で特徴をつけて、発言をそれらしく聴かせなければならない。

一人が複数の相矛盾する性格を持ったり、成長発展したりすることは、本来戯曲には無理な話だ。

固定したキャラクターを操るしかない(映画も含めて、戯曲以外の作品も、今ではこのやり方で作られているが)。

特にこの台本では、キャラクターすら弁別されていないので、何人かが舞台上でざわざわ右往左往しているとしか見えない。

マダムTは、今のこの口調で突っ張る、という。

ハイトーンで、投げやりで、高飛車で、落ち着かないしゃべり。

賛成だ。

あとで叱られてもいいから、立ったり坐ったり後向いたり、携帯いじったり、あくびしたり、鏡出してマスカラいじったり、即興でやれることはいっぱいあるよ。

そうするわ。

ほかの人たち、まだ科白入ってないのよ。どうなるのかしら。

激とばしたら? 今のしゃべりの調子で。

まさか。そういう立場にあるはずないでしょ。

ドアを蹴って、さっと帰った。