『あなたがたの会った試練で、世の常でないものはない。神は真実(faithful)である。あなたがたを耐えられないような試練に会わせることはないばかりか、試練と同時に、それに耐えられるように、のがれる道(the way of escape)も備えて下さるのである』(新約聖書『コリント人への第一の手紙』第10章13節)
クリスが全25週のがん治療のうち、9週目の抗がん剤投与を受けた
投与前の検査にて、クリスの胸腔部の腫瘍は…
完全に消失したことが確認された(↑左・初診時、右・今回)
がん治療の奏功率でいうと、CR(Complete Response)、完全奏功である
他のわかっているすべての腫瘍についても、CR判定であった
ただし、これでクリスの身体から、がんがすべて退散したわけではない
血液中など体内にまだ、がん細胞は生き残っている
そうした『見えざるがん』を考えると、ここまでで退治できたがんは、治療開始時の「およそ半分くらい」だという
また、クリスの脳内には、脳腫瘍が潜んでいる可能性もゼロではない
(いま投与している抗がん剤は、脳内には届きにくい。血液脳関門に遮断されてしまうので)
残りの期間の抗がん剤投与は、だからクリスの身体に残っているがん細胞を徹底的に叩くための治療となる
それでも、100%完全寛解が約束されているわけではない
治療途中で、がん細胞が抗がん剤に対する耐性を獲得してしまうかもしれない。そうなればその抗がん剤は効果を期待できない
また、完全寛解が達成できたとしても、治療終了後すぐに再発するケースもある
イヌのがん治療とは、それほどまでに厳しいものなのだ
けれど、僕たちは必ず勝つ‼︎
クリスの視力は、依然として戻らない
だが、今のクリスには失明当初の、声をかけて触ってもビクッとしていた怯えるような様子はない
残された聴覚・嗅覚だけでなく、風と言うか気配と言うか、もっと言えば第六感のようなもので僕たちを見ているように思えるのだ
今はまだ、家の中では…
ほとんど休んでいる(記事を書いている今も、僕に身体を押しつけるようにして穏やかに眠っている)
そして、たとえばオシッコがしたいとか要求があるときには…
スッと頭を上げる
一声も発しない。まるで僕たちが自分を見ていることを『わかっている』かのように、静かに頭を上げる
もちろん、僕たちはクリスの視力が回復することを願っている
けれど、もしその願いが叶わなくとも、クリスは視力の代わりに僕たちとコミュニケーションが取れる『心の眼』をすでに手に入れたのではないか
神さまはきっと、11年半というこれまでの命に加えて、さらに『心の眼』という贈り物もクリスに授けてくれたのではないか
だから、僕たちはこれからもずっと、クリスと真正面から向き合い心の声を聞き、共に戦っていけばそれでいい
それさえできていれば、きっと何もかもが上手くいく。そう思うのである
神さまはきっといます
シェヴァ兄ちゃんもいるからー‼︎
※Randy Crawford『Almaz』(1986年)
隣人の依頼でRandy自身が書いた曲。Almazは隣人の妻の名だが、アラビア語、アムハラ語などで『ダイヤモンド』の意味がある