山梨県の名物料理といえばほうとう。
これは郷土料理百選にも選定されており、全国的にも知られた料理である。
逆にこの郷土料理百選の中で、ある程度知られているものこそが珍しい。
そういう点伝統料理の中ではメジャーなものである。
ほうとうはかつて二回ほど食べたことがある。
最初の時は値段が高い上にはちょっとまずいと思ったので、それ以降は県内を通った時も控えていた。
昨年甲府駅前の店で食べたときは、別に普通の具だくさんの味噌煮込みうどんだと思った。
ほうとうは甲斐の国全域に広がっているが、富士吉田地区にもえらくほうとうを掲げる看板を出している店が多いので、今回甲府盆地のものとどこが違うかと思い行き当たりばったりだが、ある店には行ってみた。
富士吉田といえばほうとうと同じく山梨県の郷土料理百選にも選定されている。
ほうとうはすでに弥生時代あたりから似たようなものが存在し、平安時代には文書にもその名前が出てくる。
甲斐の国の雄である武田信玄は戦場食(レーション)として用いた。
ここで問題なのは甲府盆地のほうとうとどこが違うのかということであった。
甲府と富士吉田は少し離れている。
おまけに富士山麓という付加価値もついている。
また吉田のうどんの場所でもある。
ここの基本メニューはしんげんほうとうのようだ。
後は自分にとっては余計なトッピング。
かなり単純なものだった。
付け出し的なものは全くない。
唐辛子らしきものはあった。
吉田うどんに特徴的である唐辛子のすりだねはない。
具沢山でカボチャが入っているのはここも同じだ。
味噌の色が赤っぽくなければ名古屋の味噌煮込みうどんと似たようなものだ。
同じような値段で出されているが、関東地方に多い坂東太郎和食チェーン店の味噌煮込みうどんと比べればちょっと地味だ。
鉄鍋に入っているのが違うところか。
昔は暖炉の上に吊り下げていたのだろうか。
土鍋ではできない。
カボチャはすでに崩れかかっているが、皮があるため何とか形は保っている。
ここであることに気が付いた。
ほうとうは普通味噌味だが、この富士吉田のものは醤油味だと思っていた。
帰りに店の主人に確かめると、ほうとうはどこでも味噌味だと言っていた。
ここで勘違いのもとが分かった。
醤油味なのは埼玉県深谷の煮ぼうとう。
今年三月に飯間の大河ドラマの主人公である渋沢栄一の記念施設を見学に行ったことがある。
その時隣接するところで食べたのが、醤油味の煮ぼうとうであった。
これと勘違いしていたことに気が付いた。
群馬県には同じものだがおっ切込みという名前のものがある。
秩父にもほうとうがある。
ちょっと遠いが岩手県にはひっつみがある。
名古屋にはもちろん味噌煮込みうどんがある。
また鍋焼きうどんも同じようなものか。
この店のものはうどんの質がよいせいかおいしかった。
たぶんこれがほうとうの標準だと思う。





