さいたま市の北浦和から所沢へと続く国道463号線。
通称浦所線というが、この道は関越自動車道所沢インターへと続くので以前よりよくとおっていた。
最近はこの道の付近に大型商業施設であるららぽーと富士見もできた。
国道17号バイパスからこの463号線に入ると左に埼玉大学を通り過ぎ、荒川にかかる秋ヶ瀬大橋を渡って、少しのところの右側に肉汁うどんの看板を掲げる店が数年前からあるのに気が付いていた。
ここは前はそば屋だった。しかし変わったようだ。
最近増えてきたという肉汁うどん店の一つだろう。
今回ケンミンSHOWで新たに知ったので、ここに行ってみることにした。
店の名前は『竹國』。
調べてみたら県内狭山市に本店のある武蔵野うどんの老舗のようだ。
自分から見れば今や埼玉名物となった肉汁うどんもどうもこれは県中部、西部のものだという感覚がある。
武蔵野とは東京都多摩地区から埼玉県西南部にかけて広がる火山灰である関東ローム層が覆う台地である。
ここで江戸時代より麦や雑穀が作られていた。
うどん打ちも行われ、これらを総称して武蔵野うどんといわれている。
肉汁うどんはこの武蔵野うどんを使ったこの地域特有の料理名である。
キノコや鶏肉をを具にする場合もある。
何故かかき揚げやてんぷらはない。
これは讃岐うどんの習慣か。
関東にはもともと揚げ物はないのかもしれない。
前に行ったマツコさんの番組でゲスト出演した埼玉うどんの研究家が、自分の推しうどんに特殊なものばかり出してきたので、マツコさんが変化球ばかり出してくるなと怒り気味だったことを思い出した。
ここにあるクリーミーカレーやあま辛うどんなどがそれに値するかもしれない。
自分はラーメンがそうだが、その店の基本メニューしか注文しない。
従って当然肉汁うどんである。
右のトッピングの追加物もない。
揚げ物はトッピングのほうにあるか。
この店は基本は漬けうどんである。
『田舎っぺ』でも『翁の郷』も同じである。
しかしかけうどんもメニューにはある。
肉汁うどんは埼玉県南西部や多摩では、すでに明治時代からでこうした食べ方があったというだけで、明確な定義はない。
また肉汁うどんの業界組合もない。
しかし武蔵野うどんを使うのが主だということは言えるようである。
中には讃岐うどんを使う店もあるようだ。
これでわかった武蔵野うどんは江戸時代からあった。
しかし武蔵野うどんは料理ではないし、肉汁うどんは比較的新しいので伝統郷土料理には該当しなかったのではないか。
それに昔はイノシシなどがいるところに限られる。
その結果、同じ関東うどんを使い、かつ江戸時代からあった加須の冷や汁うどんが県を代表する郷土料理に選定されたということか。
このうどんは太く腰が強い。
しかし伊勢うどんほど強くないので自分にとってはちょうど食べごろだ。
歯で噛むしまった食感が伝わってくる。
全体が強く、中に腰がより強い芯があるわけでもない。
色が白く、稲庭うどんのような高級感もある。
中身のあるおいしいうどんだと思う。
これは豚肉の汁である。
脂が浮いているのがうどん汁としては珍しい。
ラーメンをつけても十分にいけそうだ。
味は基本的に甘い。
ケンミンSHOWの試食では豚の甘みが引き出ていると言っていたが、それだけではなく、かなりの砂糖が入れてある。
どちらかというと砂糖の甘みのほうが勝っている。
脂濃いので当然こくは深い。
現代人の味の好みの良いところを突いている。
これはたれというよりも汁なので、うどんを多く入れると普通のかけうどんのようになってしまう。
うどんの麺と汁の味を両方味わううどんである。
これは今まで県内で食べてきた肉汁うどんと大体同じでさほど変わりはない。
しかしこの店は創業が昭和29年と古い。
江戸時代からのものは元はないかわからないが、戦後の商業的なB級グルメには必ず元がある。
そのもとは探したがなかなか見つからない。
また自称もあるのでこれをそのまま信用するわけにはいかない。