『てんや』は天丼のファーストフード店である。
1989年の創業で、現在は関東、東京を中心に161店舗を持つ。
関西には『さん天』という別の天丼チェーン店がある。
牛丼の吉野家ほど全国的ではない。
てんやには自分もかつて何回か行ったことがあるが、要するに安く食べられる天丼チェーン店ということであった。
今回浅草の老舗天丼店との比較という意味で、川口市内にある店に行ってみた。
店の前にはメニューの看板が貼ってあった。
基本メニューは540円の天丼のようである。
味噌汁もついている。
自分はラーメンもそうだが、最初にはその店の基本メニューしか注文しないので、今回も当然それを頼んだ。
ここで行ってみたいことは、値段と味の比較である。
見た目には浅草老舗ものとそうは変わりはない。
注文から出来上がりまでは早い。
多分、作業がシステム化されているからだ。
値段のことから先に言えば、浅草で食べたものは1600円のもの、そしてさらに味噌汁と消費税がついて2000円近かった。
ここは540円とは書いてあるが、それは消費税込なので、本体値段は味噌汁付きで500円。
何と四分の一の値段である。
ただしここのメニューにアナゴはなかったので、同種、同量で比べれば三分の一程度か。
エビなどの材料は多少落ちるかと感じたが、そう気になるようなものではない。
両者を目の前で比較して食べればわかるかもしれないが、全く別に食べれば、素人にとってはそんなものかと思い、特に顕著な違いが判るわけではない。
口当たりだけがおいしければそれで良しとするものではないだろうか。
ここはタレも甘いが、老舗の伝統のタレとどこが違うのかは分からない。
これは大手醤油会社とコラボすればよいものなどすぐにできる。
揚げ方などの料理法は大規模チェーン店の最も得意とするところで、長年研究を重ね、改善を続けたものだろう。
ホームページによれば使っている油は日清製油とのコラボらしい。
大手と組んでその会社の開発担当者が日々改善を行っている。
材料の大量仕入れに、味の研究開発、そして製造過程の合理化、システム化などによって低料金を実現している。
自分が今まで見てきた限りでは、こうした大規模外食チェーンは値段が安いということが第一である。
家族4人で行って2000円。
ラーメンの日高屋、すがきや、北陸8番、ラーメンショップ、リンガーハット。
牛丼は吉野家、すきや、松屋、うどんの丸亀製麺、はなまる、山田うどん、そして埼玉の誇るイタリアンのサイゼリア、焼き肉の安楽亭、かっぱ寿司など安いところは数多くある。
最近はいきなりステーキも素晴らしい。
味はこうした大企業であれば普通以上のものを開発できる。
見かけは若干粗末なところもあるが、老舗の三分の一の値段を払って満足して店を出た。
ただ今の世の中、ブランドとか場所とか話題性など可視化できないもの、プレミアム、気持ちの中でしか存在できないものの価値は大きいと思う。
この『てんや』はどうやら浅草発祥らしい。
『ASAKUSA』とはっきりと書いてある。
なお調べてみたら本社は浅草にある。
やはり浅草は天丼、天ぷらのメッカなのだ。
しかし天丼を食べたいと言った客人を『てんや』に連れて行くわけにはいかない。
どうしても浅草の『三定』にということになるだろう。
そのあたりはどんな業界でもそうだが、住み分けの問題だろう。