秩父市内のヤオコー、ベルクを見て回って、驚いたことがもう一つ二つあった。
それは地産品が多い。
正直、全国の多くの地域にはスーパーにおいてある地産品は少なく、先日の日光のように、お土産物はあるけどスーパーには置いていないという所が実に多い。
しかしここは違った。
埼玉県にはそんなにスーパーにおいてあるほどの地産品はないと思っていたが、それが次から次へと出てくる。
伝統食品から最近開発されたと思われるものまでさまざまと。
まずはしゃくし菜漬。
しゃくし菜は白菜の代わりのものとして、秋から冬にかけてこの地方で栽培されていたものであるが、それを醤油で付けたものである。
いくつかのメーカーからも出されており、醤油だけではなくわさびで付けたものなどもあった。
野菜の漬物には漬ける野菜は同じだが、漬け材料が違うものと、漬け材料は同じで、漬ける野菜が違うものとがある。
大根漬け、白菜漬けなどは前者、キムチ、日光たまり漬けなどは後者である。
これは前者に属する。
あくまでもしゃくし菜が中心なので、それがキムチや味噌漬け、たまり醤油漬けになってもよい。
道の駅などにはそれぞれのしゃくし菜漬けであふれていた。
食べたのはもうだいぶ前になるのでよく覚えていないが、食べきるのに苦労をしたという記憶はないので、少なくとも食べやすい漬物であったということは間違いない。
秩父には他にもとうがら、味噌蔵漬など多くの漬物があるようだ。
しかし残念なことに私自身は米をあまり食べず、その結果漬物も食べないので、もうこれ以上買う気はしなかった。
日本でこういう地産の漬物の多いところは、今まで行った中では、福島県の会津、岐阜県の高山などがあった。
秩父もそれに相当する。
考えてみればこれらの地域にはある共通点がある。
それはいづれも盆地であるということだ。
今でこそ周辺との交通は日常的に可能だが、江戸時代などはほぼ隔絶された孤島のような存在だっただろう。
こうしたところに独自の食文化が発達したというのはよく言われている。
もう一つ秩父の食品として興味あるものがあった。
秩父おなめである。
おなめとは何だろう。
伝統食品には訳の分からない言葉を使っているものが多い。
日光のけっこう漬け、大分のりゅうきゅう、福島の味噌かんぷら、鳥取県境港のいただきなどケンミンショウにもこの手のものが沢山出てくる。
このパッケージの裏には説明文が書いてあった。
おなめだけでは内容がわからないので、裏の説明文を読んでみた。
要するに味を付けた味噌ということだ。
金山寺味噌、長野、新潟のしょうゆの実、この前千葉県で買ったもろみ味噌ひしおなどと共通する。(醤油も味噌ももとは同じ)
古代から伝わる発酵食品は超の付く伝統食品。
米を食べるときの味として昔の人はこうした味噌を使った。
戦国時代の武士の戦場食は米と味噌だったという。
この地には相当古くから人が住みついていたに違いない。
しかし他地域との交流が少なかったので、伝統が失われなかった。
もし関東平野内の各地だったら、いっぺんに江戸の町の文化が浸透してきたに違いない。
実はこのおなめは今まで封を切っていなかった。
発酵食品なので、当然保存はよい。
今、このブログを書くので、冷蔵庫の隅から見つけ出して、開封してみた。
一目見ると、何かあるものと似ている。
しかし近づけば、少し刺激のある甘く香ばしい味噌のにおいがしてくる。
ここではっきりとした違いに気が付く。
食べるとしたご飯の友だろうが、乾燥さえさせなければ、味噌なので持ちは良いと思うので、食べるのはまあこれからだ。
と思ったが、今朝食でご飯の上にのせて食べてみた。
これはかなり塩辛い。
ほんの少しのせるだけが適量だ。
さらに甘い。辛さと甘さが一度にやってくる。
不思議な食品だ。
もっと埼玉県内はおろか全国に広まってもよいのにと思った。
しかしこのブレイク、拡散するかどうかは味とかうまい、まずいの問題ではない。
それは企業の営業力、宣伝力、生産力の問題だ。
多分このおなめを作っている会社というか業者は小さいのだろう。