今日は、Victoria州の鍼灸師登録機関、CMRBV(Chinese Medicine Registration Board of Victoria)について書く。

オーストラリアのVictoria州は、州政府が自然治療施術者、特に鍼、漢方を扱う者を管理する事になっているので、Victoria州で鍼灸の仕事をする者は、CMRBVに登録が義務づけられている。それは、学生でも、ワーホリでも同じ。


登録してない者が鍼灸の仕事をすると、罰金が科せられる。毎月、CMRBVから送られてくる月報に、違法鍼灸師の名前が掲載され、罰金額まで載っている。

登録の事だが、一定の中国医学教育を受けた者を州政府が掌握し、管理する事にしても、急速にやったのでは、衝突、摩擦が起こる。


例えば、香港の鍼学校で、1年教育を受け、25年前に卒業し、オーストラリアのメルボルンに移住し、25年の実績を持つ経験豊かな中国人鍼師などに、現在の教育システムを嵌め込み、登録させようとすると、どうしても無理が起こる。

そこで、Victoria州は、“Grandparenting”という猶予期間を、2002年1月1日~2004年12月31日の間に設けた。この3年間の間に、登録をすると、“…despite the fact that they do not qualify under section 5.”と、108の条項から成立する『Chinese Medicine Registration Act 2000』という法規に準じる事となり、登録が比較的容易だった。

その“section 5”の中には、「in the opinion of the Board, has a qualification that is substantially equivalent or is based on similar competencies to a course of study approved by the Board」という条項がある。


この部分の「substantially equivalent」がポイントと思われる。実質、同じような価値がある教育機関を卒業していればいい、という訳だ。日本の3年間の鍼灸学校教育と、国家試験合格が、これに該当すると思われる。

現在、Victoria州が要求する鍼師登録の基準は、「オーストラリア国内では4年間の鍼学校、中国では5年間の鍼学校教育を受けた者」、「或いは、それと同等の価値があると委員会で認めた者」が登録出来る、と指定されている。

さて、この「CMRBV」申請に対して、以前、ぼくが準備した書類を列記しよう。

・既にオーストラリアで鍼灸師として仕事に従事している旨を書いた手紙。
・申請申込書(30ページに及ぶ)。
・オリジナル卒業証書(公証人のサイン入りコピー)
・英文卒業証書(政府公認の翻訳家による英文。公証人のサイン入りコピー)
・オリジナル成績証明書(公証人のサイン入りコピー)
・成績証明書(政府公認の翻訳家による英文。公証人のサイン入りコピー)
・日本の国家試験の概要を書いた英文の手紙
・オリジナルはり師免許(公証人のサイン入りコピー)
・オリジナル英文はり師免許(公証人のサイン入りコピー)
・オーストラリア・スポーツ・トレーナー資格証明書(公証人のサイン入りコピー)
・労災保険取扱施術者証明書(公証人のサイン入りコピー)
・Senior First Aid証明書(公証人のサイン入りコピー)
・日本での鍼灸接骨院勤務証明の英文手紙(公証人のサイン入りコピー)
・日本での整形外科医院勤務証明の英文手紙(公証人のサイン入りコピー)
・日本でのスポーツトレーナー活動証明の英文手紙(公証人のサイン入りコピー)
・オーストラリア民間保険会社のプロバイダー登録証明(公証人のサイン入りコピー)
・損害賠償保険加入証明書(公証人のサイン入りコピー)
・申請の年に、鍼を購入した領収書(公証人のサイン入りコピー)
・鍼灸院経営の届け出を認可されている役所からの証明書(公証人のサイン入りコピー)
・英語能力証明書(公証人のサイン入りコピー)

以上の書類を弁護士の前で見せて、サインした後、審査料$150を添えて、書留で送った。

煩雑だが、他の鍼灸師登録機関も、ここまでではないが、同じようなものである。全部のコピー(手紙が3ページになっているとすると、3ページ分)に公証人のサインが必要になる。これが結構大変なのである。

ぼくは、今まで、3回、鍼灸師協会に登録を申請し、4回ほど民間保険会社に登録を申請しているが、その都度、公証人にサインを頼まないといけない。今回のように、場合によっては、50ページほどのサインが必要な事もある。

オーストラリアの公証人は仕事ではないので、無報酬であるし、殆どの人は自分の仕事を持っている。一般の事務員でも、公証人になっている人が居るので、その人の職場に行って、「すみません。サインして下さい」と膨大な書類を持ってお願いする事になる。気の毒だ。

だから、ぼくは、3人の公証人、同じ事を代行出来る医師、税理士、弁護士にローテーションを組み、サインを頼んでいる。

CMRBV登録の猶予期間は、2004年12月31日で終わった。現在は、オーストラリアの鍼灸教育と同等の能力がないとCMRBVが判断すれば、筆記試験、実技試験を受ける事になる。