AACMA(Australian Acupuncture Chinese Medicine Association)加入のため、展開した作戦の結果を書く。

1…AACMA内部の高官と直接的、間接的に接触出来る人間を探索し、懐柔する

知り合いの中華料理店香港チャイニーズオーナー兼カンフー師範に知っている著名な中国人鍼灸師が居るかどうかを聞いてみたところ、心当たりがあるというので、その場で中国人鍼師・陳さんに連絡を取った。


陳さんは、カンフー師範の弟子だ。すると、陳さんは、李さんという中国鍼灸大学教授を紹介してくれたので、カンフー師範は、李さんの元を訪ねて、菓子折持って、直談判して来いと言う。

ぼくは、チャイナタウンの一室に陣取る李さんの治療院を訪ねた。李さんは女性だった。老師だ。英語がまるで、通じないので、李さんの弟子兼見習いの女性鍼師見習い学生に通訳をしてもらったが、後で何の役にも立ってない事が分かった。

小一時間、ぼくの状況を英語で説明して、返ってきた答えは、「なるほど。それなら、AACMAに電話してどうすればいいか聞いてあげよう」。李さんはAACMAに電話して、事務局の人間と中国語で話しをしている。電話を切った。


「分かったよ。ここの住所がAACMAの事務局だから、ここに書類を送るといいよ。そうしたら、審査してくれる」

あの~、住所も分かっているし、そこに書類を送った結果が、不如意に終わったので、ここに来てるんすけど。

「ああ~~~っ、そういう事か。じゃ、私はAACMAの会長を知っているから、直接電話してあげるよ」

え?会長に?いきなりの形勢逆転。大丈夫か。そう言って、李さんは、会長の名刺を見せながら、電話をしている。不通。

「また後で電話しておいてあげるよ。大丈夫大丈夫」。大丈夫と連呼されるごとに、不安が増幅する。

会長とねえ。知り合いって、本当かなあ。上手く行くのかなあ。ぼくの葛藤と懸念をよそに、李さんと通訳の女性は、にこにこ笑っている。恐い。ぼくのAACMA加入の橋渡し役をしてくれないか、という意図は伝わったのであろうか。


実は、全然伝わってなかったのである。それが分かったのは、この会談の3ヶ月後。

5回目の会談の時、李さんは、「会長から、『今は電話しないでくれ。それに、彼の加入決定をするのは、個人ではなく、委員会だ。だから、私に直接、交渉されても困る』と言われた」

そんな事が分かるのに、更に、3ヶ月が経過した。作戦は不発に終わった。


2…滝沢さんの作戦と同様、池田政一に直談判する

日本経絡学会の重鎮・池田政一氏にAACMA絡みの知り合いが居るかどうか書簡で聞いてみる事にした。


知り合いが居たら、その人間に直接聞いて、どういう事をすれば、AACMAに加入出来るかどうかの道標が分かると思ったものの、2週間後に届いた返事には、「面識もない人に、そのメンバーを紹介する事はしません。滝沢君に聞いてみたらどうですか?」と、手書きの汚い字で書かれていた。


さすが重鎮。誰も紹介してくれとは、頼んでないんだが。海外で勤務する日本人鍼灸師の窮乏には、興味がないようだ。「アドバイス、ありがとうございます。仕事頑張って下さい」とだけ書いて、返信しておいた。これも不発。


3…外務省、つまり日本領事館から圧力をかけてもらう

オーストラリア在住の日本人が困っていたら、それを助けるのは、日本領事館の仕事だ。ぼくは、それまでのAACMAとの交信記録を全部FAXし、助けを求めた。


「AACMAという協会に登録申請をしているが、過去の日本人は、問題なく加入出来て、ぼくが出来ないというのは、恣意的ではないか。試験を受けろの一点張りで、理由の説明がなく、個人的レベルで、国家試験を認めたり、認めなかったりするのはどういう訳か。有力者の紹介があればいいという事か。試験は、英語と中国語だけというが何故なのか。日本語でダメな理由は何だ」という趣旨の事を領事館から聞いてくれと書き送った。

結果として、領事館の態度は、「圧力はかけられないので、釈明してもらう方向で領事から手紙を出す」という事になった。


3ヶ月の間に、領事館から、3通の手紙を送った後の結論は、「委員会の最終結論は、『試験を受ける事』。言語については、オーストラリアは英語圏なので、英語を使うのは当たり前。中国語を使うのは、我々の組織は、中国人が中心になって運営されており、日本人からは何の恩恵も受けていない。だから、中国語を使ってもよいという事になっている」

何で『試験を受ける事』になったか、説明してくれというのに。CさんとTさんが、無試験で加入出来た理由は、何だ?ぼくとの違いは何処にある?という事を聞いているのに、AACMAは、この追求を嫌がってか、全く回答してこない。



4…論理的抗議文で徹底抗戦を実行し、相手を諦観の境地に誘導する

去年の11月から、加入出来ない理由を示せ、法的根拠のある人間が、個人的レベルで加入出来ないのは、どういう意味だ。そういう旨を書いて抗議した書簡は、全部で12通。その間、相手は、ぼくの手紙については、4通に1通の割合でしか、返事を寄越して来ない。


そのうちの最新の手紙には、「承知しました。あなたの申し出について、現在、調査中です。はっきりした事が分かりましたら、ご連絡致します」だった。事務局と会長宛に送ったが、返事は、同じ内容だった。

以上、四つの作戦を遂行してみたが、成就したものは、一つもなかった。一応、参考までに経験談を書いてみた。