某年9月、オーストラリア最大の鍼灸機関であるAACMA(Australian Acupuncture Chinese Medicine Association)に鍼灸師登録申請をした。

ぼくは、オーストラリアに来た時、鍼灸の仕事を探していたのだが、偶然、日本人鍼灸師のTさんの治療院で働く事になった。

Tさんは、AACMAの会員である。Tさんが、AACMAに鍼灸師登録申請したのは、1997年。当時も、会員として認可するかどうか保留だったらしい。丁度、その頃、AACMA主催の鍼灸講義をするために、日本から経絡治療学会の重鎮・池田政一氏が、講師として、オーストラリアに来ており、ここを先途と、Tさんは、池田氏に事の顛末を話したところ、2週間後に、会員として認可された。

AACMAへの加入は、外国人には、高い障壁になってきている。だから、ぼくも鍼灸師登録をする時、一番安易だと言われたATMS(Australian Traditional Medicine Society)に申請して、成就出来なかったため、次に、ANTA(Australian Natural Therapists Association)に申請したものの、不完全に終わった。AACMAへの登録申請は、最後の牙城だったというわけだ。

登録を申請して、2ヶ月後に返事が来た。


「あなたの履修内容では書類審査では、入会は出来ないので、11月か2月に行われる試験を受けて下さい。試験は、西洋医学、東洋医学、鍼理論で、全部で600問。70%をマークしないと不合格です。合格すれば、次は実技試験を受けられ、それをパスすると会員になれます。試験の使用言語は、英語か中国語です」という内容。

現在、3人の日本人と1人のオーストラリア人(日本の鍼灸学校を卒業)がAACMAの会員になっている。

Aさん…日本の呉竹の鍼学校を卒業。10年ほど前に加入。元AACMA委員会委員。
Bさん…15年前に加入。経緯については不明であるが、当時は簡単だったと聞く。
Cさん…オーストラリア人。日本の鍼学校を卒業。半年揉めた挙げ句、加入認可。
Tさん…上の事情による。

Aさん、Bさんは、ともかく、CさんとTさんの事情を聞くと、納得出来ない話だ。二人とも試験は受けていない。規則が変わったというなら、納得も出来るが、入会加入のためには、試験を受けなければいかん、という規定が出来たのは、二人の申請以前である。

また、試験の言語が、「英語か中国語」しか選択肢がないというのも、アンフェアだ。


という事情と背景で、抗議の手紙を翌日に出した。日本人鍼灸師の資格は国家資格だ。過去、4人の日本人鍼灸師(Cさん含む)も会員として、認可されているではないか。一部の日本人鍼灸資格を認めんという根拠を示せ。

何で、英語と中国語なんだ。英語だけなら、分かるが、中国語も入れるというのは、差別じゃないのか。試験を11月か2月にに受けろというが、もう11月の試験は、終わってる。

そして、抗議後に、「結果としては同じです。諮問委員会の結論は、試験を受けるように、という事です。次の試験は、4月か、6月です」という回答が、書簡で返ってきたのが、翌年2月。再び、抗議の手紙を投函して、3ヶ月が無為に経過したが、質問に対する回答は、なかった。

そこで、AACMA爆撃計画を草案し、外堀から攻撃をすることにした。

1…AACMA内部の高官と直接的、間接的に接触出来る人間を探索し、懐柔する
2…Tさんの作戦と同様、池田政一氏に直談判する
3…外務省、つまり日本領事館から圧力をかけてもらう
4…論理的抗議文で徹底抗戦を実行し、相手を諦観の境地に誘導する

検討した結果、全部の項目を複合的に実行する事にした。