そのオンナはどこか寂しい過去を匂わせる
迷いのない瞳は大きく開かれ
まるで私を挑発するかのように
そこに爪を立てながら
遠くから
真っ直ぐに私を見つめる
『やめてくれ!頼む!』
私が駆け寄れないことを分かっているのか?
ゆっくりとその感触を楽しむ表情は
まさに小悪魔
時折、確認するかのように新たなキズをかじる
『あ~
どうしたらいい
私の心のキズまで深くなるばかりだ
』そんな私の叫びをよそに
オンナは爪をたて続ける
そして、満足げにその場を離れると
ゆったりと横たわり
その余韻に浸りながら
毛繕いを始めた



私の皿洗いが終わる頃
そこには
更に深いキズが刻まれ
物悲しい残骸が落ちていた








