切ない一年生 | shell studio

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子育てねっと 掲載イラストエッセイ
 


待ちに待ってたお入学。

我が家にもぴかぴかの一年生がおりまして、日々お名前書きの練習に余念がありません。
最近はいろいろと準備号だのお入学特別付録だのを頂いたりする機会も多く、自宅にはけっこうな量のドリル?があります。

なんだか「お勉強ってかっこいいー!」と嬉しい勘違いをしてがんばってくれているので、助かります。いつはっと我に返るのか…まあイヤになるまでやらせておきましょう。

そんな小坊主くんですが、保育園卒園間際、すさまじく折り紙に凝っていました。
いつも汗だくになって戦いごっこに明け暮れていたので、ちょっと意外な風景。
6年近く通った保育園で、折り紙に向かったことなど皆無だったので、驚いてしまいました。
ふーん、こういう手先の遊びも好きなんだ…と見ていたのですが、それにしてはすごく真剣で、
短期間で、折鶴までできるようになっていました。
今まで角を合わせて三角にすら折れなかったのに!

実は理由があったんです。

子どもの通っている保育園では、卒園すると、子どもたちは幾つかの小学校に分かれてしまうのでした。ウチの小坊主君が入学する小学校は、なんと男の子7人のみ!! クラス替えもなく、みっちりと汗くさく荒くれた6年間が待っています。

小坊主君にはアイドルの女の子「らんちゃん」がいて、これはもうその名の通り、花のように可憐で可愛いお嬢さんなのですが、彼女とは離れ離れになってしまうのです。
意を決して、彼はらんちゃんに聞きました。
「この保育園で誰が一番好き? 」
すると、
「あなたは2番目に好き。一番はとしくん。だって折り紙が上手なんだもん。たくさんプレゼントしてくれるんだよ。」
女の子ってもう6歳から男の子を手玉に取ることができるんです!!
あなたは二番!! 
この言葉に、もうメロメロの小坊主君は、首位奪取するために、ものすごい「折り紙」特訓を開始したのです。涙なくしては語れぬ? 折り紙修行の日々の始まりでした。

二番ということは脈なしなのでは、と判断してもいいところなのですが、
「きっと上手になったら、僕を一番好きになってくれるよ!」
と希望に目をキラキラさせて鶴を折る息子に、お母さんは何も言えません。せめてそっと新しい折り紙を手渡すのみ。

結局は、愛しのらんちゃんが振り返ってくれることもなかったんですけどね。らんちゃんは特に感慨深い様子もなく、元気に卒園していきました。

時々「らんちゃんのいる小学校って遠い?  歩いていけるかなあ」
と小さい声でつぶやく小坊主君。
なんだかせつない一年生なのでした。