【2011-09-28(水)③】
子供の頃、お茶を買いに行くのはこの偏屈男の役目だったんですよねえ。
色々言い付けられる用事はあったんですけどが、一番好きなのがお茶を買いに行かされることだったんですよねえ。
お茶屋さんに行くと、爺さんがいるんですよねえ。
その頃は店の奥にでっかい茶箱が並んでて、その茶箱の一つを引きずり出してきて蓋を開けて、分量を上皿天秤のお皿に分けるんですよねえ。
まだ匁でしたけどが、分量が決まると、お茶を入れる長い筒型の袋に詰めるんですよねえ。
その爺さんのお茶の詰め方が、一種の芸術に思えたんでしょうかねえ。
五尺足らずのその爺さんが、立ったままで袋にお茶を詰めていくんですよねえ。
最初にザッと流し込んでから、くの字に曲げた片方の膝の上でトントンするんですよねえ。
或る一定のリズムがあるみたいで、見てる傍から詰まっていくんですよねえ。
トントンザッ、トントンザッっていうのを2,3回繰り返すと袋が一杯になるんですよねえ。
最後のトントンし乍ら、茶袋の束の傍に置いてある紙縒りの中から1本をスッと抜き出すんですよねえ。
袋の口を締める為なんですけどが、その紙縒りの結び方が又目を見張らせるやり方なんですよねえ。
クルックルッシュッ、シュシュクルッ、シュってんですがねえ。
そして最後に、お裁縫鋏みで余りをチョキンと切るんですよねえ。
息するのも忘れるくらい、目っ張ってたんですよねえ。
お金払ってでも見なきゃいけない芸と感じさせるものだったんですよねえ。
あんな人がやってる仕事をしてみたいなあって思ってたんでしょうかねえ。
何とも粋で鯔背で恰好良いなあって人がやってたんですよねえ。
自分も大きくなって仕事するようになったら、この人がやってるこの仕事やってみたいなあって思ったんでしょうかねえ。
その仕事そのものでは失く、やってるその人みたいになりたいからその仕事やってみたいなあって思ったんでしょうかねえ。
その仕事すればその人みたいになれるのかなあって思わせて呉れる人、いたってことなんですかねえ。
今はどんな仕事であれ、そう思わせて呉れる人っているんでしょうかねえ。
何せ、年と共に見聞が狭まってきてますからねえ。
やってるその人の魅力感じるような場面に出っ喰わさなくなっちゃいましたかねえ。
いーい味出してやってるその人、いるんでしょうねえ今でも。
この偏屈男終ぞそんな人にはなれませんでしたけどが、そういう人を多さん見ることできただけでも良しとしませんとねえ。