これもやはり受験期の思い出の歌である。言うまでもなく、明治大学の文系のキャンパスは東京にある。当時の私は地元の良さなど分からなかったので、「俺は東京に出る」と意気込んでいた。もちろんその中には「大学に行って彼女ができたら甘いひとときを過ごしたい」などという下心も混じっていた(結局、野望はすぐに打ち砕かれた)。このように、様々な思惑があった。ここでは詳しく述べることはできないが、かなり自分を追い込んだ。私は、強迫的な考え方を持って勉強していた。「明治に入るか、死ぬか」と本気で考えていた。
さて、「TOKYO FANTASIA」である。この歌は筒美京平が作曲で、いい曲であるのは当たり前ではないか、というのはあるが、彼の90年代の作品の中でも私は特に気に入っている。
TOKYO FANTASIA 幸せは摩天楼
星のFANTASIA 見上げるほどに届かない
実は私は「幸せは摩天楼」という一節を中心に歌詞の意味がよく分かっていない。幸せとは摩天楼のように幻想的(あるいは幻想)なもの、ということなのだろうか。こういうことは、よくある。歌詞の考察の類が私は苦手なようである。合っているのか間違っているのか、いつも不安になる。
しかし、この歌を聴いて、「東京ってこういう街なんだ」というイメージが私の頭の中で作り上げられたのは紛れもない事実である。やはり、東京といえばキラキラしているというイメージが私の中にはあった。春はビルに囲まれた公園の桜が咲き誇り、夏には高層ビルに「緑のカーテン」が作られ、秋には街路樹が色づき、冬にはイルミネーションが煌めく…歌詞に登場する女性は、突然の出逢いに半信半疑ながらも、運命の彼に巡り逢えたからと覚悟を決める。私は、別に女の子と出逢うという意味に限らず、このようなロマンティックな出逢いが東京には溢れていると信じていた。何度も聴いた背景にはこれがあるだろう。
実際の東京は、キラキラというよりギラギラに近く、ほとほと参ってしまったが、その辺のことはまたの機会に述べることとしよう。
【楽曲情報】
作詞:湯川れい子
作曲:筒美京平