この歌がつい昨年まで新幹線の車内チャイムで使われていたことは多くの人の知るところである。

しかし、この歌のタイトルが「AMBITIOUS JAPAN!」であること、また新幹線で流れているチャイムがこの歌であったと知ったのはほんの数年前のことだった。今回はその経緯について書こうと思う。

 

ある日、なぜかテレビの音楽番組を観ていた。TOKIOの本人達が出演していたかは失念してしまったが、少なくとも確かジャニーズ(当時)の何らかのグループが歌を披露していたように思う。

 

Be ambitious!

我が友よ 冒険者よ

Be ambitious!

旅立つ人よ 勇者であれ

Be ambitious!

 

有名なサビである。「Be ambitious!」の部分はたった4音であるが、これが強烈な印象を私に与えた。

何かただならぬものを感じた私は、必死に「Be ambitious!」の音階を「ファソミファ」とドレミで覚え、ヤマハの「弾いちゃお検索」で検索した。

偶然見つかった。MIDIで作成されたと思われる音源を再生すると、やはり一致する。このような偶然は、音楽を聴く上で大きな役割を果たすことがある。

調べてみると、なんとこの歌も筒美京平が作曲しているではないか。しかも当時筒美は63歳であった。果たして63歳になった時の私がこれだけの大仕事を成し遂げられるだろうか。まず無理であろう。これは筒美京平のすごさのほんの一部ではあるが、ここに書き記しておきたい。

 

そしてさらに調べていくと、「また逢う日まで」「サザエさん」「ギンギラギンにさりげなく」「ふられてBANZAI」「Romanticが止まらない」…どれも筒美京平が作曲していたことが分かった。私が筒美京平を好きになったきっかけとしてこの歌は間違いなく大きな役割を果たしただろう。

 

残念ながら、筒美京平は私が筒美を知ってから1年ほど経った2020年に亡くなった。またこの歌の作詞のなかにし礼も、同年の暮れに亡くなった。

私の好きな音楽家が(仕方のないことではあるが)年を重ねるたびに亡くなっていくことが切ない。昨年だけでも高橋幸宏、坂本龍一、KAN、大橋純子など、数多くの音楽家が虹の橋を渡っていった。訃報を目にするたび、私が今好きな音楽家もいつかは必ずこの世を去ることになるという事実に打ちのめされる。どこかで「〇〇さん死去」というニュースを目にしなくてはならないことは、それより早く私が死なない限り確定している。訃報を見るたびに胸が締めつけられる思いだ。

そのような時、「旅立つ人に 栄光あれ」と彼岸での幸福を祈るべきなのかもしれない。

 

【楽曲情報】

作詞:なかにし礼

作曲:筒美京平