するさとは
もう そこに見えているのに
オンマー(かあさん)
イジェトラ ワッソョ (帰ってきましたよ)
と叫べば 走り出して
抱きしめてくれる
母にどんなにか会いたいのに
幼い無邪気にあそんだ
スミレ咲く河原を
思いっきりかけたいのに
柿の木の枝から枝へ飛ぶカンチの姿
真っ赤なとうがらし畑
一目見たいのに
チマ・チョゴリひるがえし
桃の精のように踊ってみたいのに
今頃故郷へきっと戻られる想いかと
ああ結ばれるのが望みだったのに
そのづるさととひた走る船の舳先から
身を投げ
深く深く沈んで言った少女
あなたの名は知らず
ただ従軍慰安婦だあったと
あなたを辱しめた私の国の男たち
大日本帝国の男たちは
肩章を外し軍刀を外し
さりげなく日本の町や村の中に
まぎれこんでしまったのに
今頃は戦友会で
なつかしく軍歌を放吟するかというのに
まだ帰れないあなたは
十代の少女のままのあなたは
いまどこの海底で
永劫のかなしみの花を咲かしているかしら
みつけなければ みつけなければ
その花を
血の色のその花をみつけなければ
戦前、朝鮮の少女たちを学校に行ける、技術が学べると嘘をいい
だまして日本軍の従軍慰安婦とされた少女たちの思いを
石川逸子さんが詩としたものです「揺れる木槿花:ムクゲファ」。
悲しい数万人、あるいは数十万人無垢の女性たち汚されたことを
狂気の時代があったことを
日本人の私達は知っていなければなりません。