日本人は海とともにある民族で、海藻も古代から好まれた食材であり、縄文・弥生時代の遺物から魚の骨とともにアラメやホンダワラなど海藻の一部が発見されている。
時代が下がって大宝律令(701年)が定められた中でも、租税として29の際産物の中にアマノリ、ミル、アラメ、テングサなど8種の海藻が記されており、このことからも海に囲まれた日本人になじみの深い食材であることが分かる。
万葉の歌人、柿本人麻呂の(釼著 手節乃埼二 今日毛可母 大宮人之 玉藻苅良武)は、読みは(釧着く、答志(たふし)の崎に、今日もかも、大宮人の玉藻刈るらむ)で、これは持統天皇が伊勢に行幸された時、都に残った人麻呂が宮人たちのことを想像して詠んだ歌だそうですが、庶民はもとより大宮人も藻を食していたことを示しています。
しかし、その海藻は、福島原発事故の影響で海水が放射能で汚染され危機に瀕しています。今、私たちが食べなくとも将来に渡って水俣での水銀汚染と同様に海生生物を通じて濃縮され、海産物に深刻な影響を与えるのはもう明白です。
人間の他に海生生物を通じて万物の命に大きな役割を果たしてきた海藻、一体いつから無害の食材となるでしょうか、柿本人麻呂には放射能など思いもよらないが、はやく(朝なぎに楫の音聞こゆ御食つ国野島の海人の舟にしあるらし)のように、大宮人も庶民も安心して海産物を食べれるようになりたいですね。