・・・麓の坊に宿借り置きて、山上の堂にのぼる。岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉じて物の音聞こえず。岸をめぐり。岩を這いて、仏閣を拝し、佳景寂寞として心すみ行くのみおぼゆ。これは奥の細道の一文であるが、山寺を訪ねて松尾芭蕉の遺稿にふれ、今更ながら芭蕉の紀行文の名文さに感心する。
芭蕉は句はもちろんのこと文章も推敲に推敲を重ねたそうですが、太宰治も一日にわずか数行しか書かずとも、残さず、破り捨てた文章の方が多かったそうですが、今の雑文作家さん達にも見習ってほしいとも思います。
