人がただ食べて、寝て、ある意味動物的に生きるのは容易いかもしれないが、人間が人間らしく、すなわち徳をもって生きるのはやはり努力することが大事なような気がする。

人間がどのような地位についているか、どのような職業についていようが、あるいは、無職であろうが個人にはそれぞれ尊厳されるべき魂がある。

社会的には往々にして社会的に名をなした人や、あるいは、経済的に豊かな人がいかにも優れた人のようになって目に映ってしまう。

しかし、人間らしく生きるということは経済・社会活動のみでなく、人間に対してあるいは自然に対しても徳を持って接することも大事な要素であると思う。

第二次大戦中の日本人研究の本である「菊と刀」のなかに、「各人(日本人)の魂は、本来は新しい刀と同じように徳で輝いている、磨かずにいるとさびてくる、例えさびが出ても、その下には依然として光り輝く魂があるので、もう一度磨けばよい・・」とあり、昨今の指導者的日本人がもう忘れてしまったようであるが、過去の日本人が本質的に持っていた徳について記述している。

また、この本では、殺人者は人間の肉体を殺害するが、嘲笑者は他人の心を殺害する、魂と心は肉体よりはるかに尊いものである、とあり、人の尊厳を傷つけることが殺人者以上に罪深いとしている。

最近は経済的にも社会的にも困難な時代となっているが、指導者的人々は光り輝く魂を研ぎ出し、徳をもって困難な事象に当たってほしい。