危険物取扱説明書 | タメイキ☆ヴィーナス

危険物取扱説明書

彼がわたしに注ぐ愛が多すぎて息苦しく


少し抵抗してみたことがある



自分にとってささいなことだったんだけれども


こじれて事が大きくなってしまい


売り言葉に買い言葉で別れ話まで出て


少し距離を置いてみましょうということになった



大切なひとが本当にいなくなるというところまでくると


数日すったもんださんざん言い合ってお互い疲れてしまっていたのに


自分にとってその存在の大きさにあらためて気付いたり


失うことの辛さを知る




彼は血の気が多く 感情が高ぶると押さえが利かなくなることがあると


はじめて知った


電話の音が割れて何を叫んでいるのかわからないくらいになり


わたしはいつかこの人に 激情のままに殺されるかもしれないと思った



ふと阿部定の恋人のことが頭に浮かんで


でも


愛する男に愛されすぎて殺されるのも


悪くない人生かもしれない  と本気で思ったりしたんだけれど



でもわたしの憶測はちょっと違ったようだ


わたしより わたしにへたに近づく男のほうが危ない


わたしが 近づいた男に対して嫌な思いをするようなことがあったら


「その男がどうなるかわからないよ」


という言葉が冗談ぬきで出てくる



大きな筋肉質の身体とぶ厚い手と反射神経と激しい性格を持ち合わせた危険物


糸が切れたらとんでもないことになりそうな。



わたしが学んだことは


私が他の男に隙を見せないことと


私自身の行動に隠し事をしないことと


充電が切れないようにすること


おなかがすきすぎないうちに満腹にしてあげること



ちゃんと取り扱ってあげれば危険のない頼もしいボディーガード。