前回に引き続き、〈美容整形〉にまつわるお話です。
自分の顔が将来どうなるか、ざっくりそのイメージならば、自分の年配の親族を見ればおおよそつかめることに、お気づきでしょうか?
加齢と共に、ほうれい線が出やすい、たるみやすい、または目尻にシワがたくさん出来るなど、顔立ちによって老化の現われ方にはタイプがあるので、年配の親族の“老け方”から、おおまかなシミュレーションができるのです。
あらかじめ予測がつけば、早めに対策にも着手できるのでは……?
そのように考えるほうが、変に抗って切ったり張ったり埋めたりの美容整形に頼るより、ずっと健全に思えるんですが。
若い頃はあまり似ていなくても、歳を重ねるごとに親や祖父母に似てくる、それが人間の定めです。
特に、娘の場合はイヤでも母親にどんどん寄っていくものだと、私自身も日々痛感しております。
身内の葬儀や法事などで、親族が一堂に会するときが一番分かりやすいでしょう(お嫁さんなど、義理の姻戚から見ると特に分かります)。
初対面の親戚同士でも顔つきや仕草がそっくりだったりすると、我々は所詮DNAの乗り物にすぎないのだという某学者の説を思い出します。
早い話、どうあがいても、あなたのその顔は祖先から受け継いだ結果なのです。
親や祖父母、それ以外にも血のつながった人たちと設計図を共有している、その事実を直視しない・したくない人が多すぎるのって、どうなんだろうと思うんですよね。
最近非常によく見かける日本人の整形フタエ。
今日こそ言わせてもらうと、あれは悪趣味のひと言に尽きます。
厚ぼったいまぶたでヒダを作ろうとすれば、ああするしかないんでしょうが……
ダウンタイムが過ぎてもなお、赤みが抜けない、あるいは茶ぐすみしていて、お世辞にもキレイにはほど遠い人が多い。
さらに小鼻を小さく修正し、口角をいじったガッツリな整形顔となると、はっきり申し上げて正視できません。
あんなの、当然キレイでもなんでもない。
ということはそれ即ち、美容整形では何も解決できていない、ということになってしまいます。
“整形した人”にカテゴライズされた人の問題の核心は、見た目の気色悪さではありません。
それは「可愛くないと認めないアンタたちが悪い、だからアタシはこうして顔を造ったんだ」という怨嗟に似た他責思考の抗議アピールであり、同時に底知れぬ闇が感じられることです。
そして彼女らは「可愛くなったらこれからの人生を幸せに過ごせる、そのためにアタシはね、だからアタシはね……!!」と、事あるごとに言い募り、聞かれてもいないのに一生を自己弁護&言い訳に費やすのです。
いやあ、しんどいしんどい。勘弁してくださいこういう人。
そもそも、整形外科医は造形作家じゃないのに、みんな勘違いも甚だしいんです。
人物デッサンとか経験した人なら、顔のパーツをいじくるなんて恐ろしくてできるはずがないんだわ。
10人、20人が次々とやって来ては、異口同音に「フタエにしてください」と注文して、全部同じになるわけがない。でしょ?
なんでそこまで医師をピュアに信用しきって、大枚はたいて大事な自分の顔をいじらせて、わざわざ変な顔になって喜んでいるのか。
どなたか、頭の悪い私にも理解できるように説明してほしいもんです。
医師から見れば、美容整形を希望する患者なんて、単なるいいお客ってだけなのに、何というかウブすぎて、もうね。
美意識の崩壊もここまで来てしまったわけですか、そうですか。
さて、視点をちょいと変えましょう。
皆さんがアコガレる外国人女性の目もとは、我々が考える二重まぶたというよりは、眼窩の奥にまぶたのほとんどが引っ込んだ状態です。
要するに、構造自体が我々とは根本的に違うんですよね。
もし身近に親しい外国の方がいらしたら、目のあたりをじっくり観察してみてください。
さらにまぶたの上の骨を触らせてもらえたらなお良し。
そんなキトクな人いないわよというなら、美術室にあるような石膏像でもOKとしましょう。
我々からすると、あれら有名な彫像の顔は信じられない造形をしていますが、アングロサクソン、ラテン、アフリカン等々、現代にも連綿と受け継がれている骨格です。
対する我らモンゴロイド系は、もともとまぶたの脂肪が厚くて凹凸が少ないのが特徴なので、無いものねだりの虚しさってものを改めて思い知るべきなのかも知れません。
ちなみに昔聞いた話によれば、シニアの年齢になれば大方の人はまぶたがくぼみ、二重まぶたになるんだって……
って、あんまり嬉しくはないよなあ。
顔は本来、生涯有効なID証である以前に、魂の在りようを反映する鏡でもあります。
クリニックの門をくぐるも引き返すも、すべての決定はあなた次第。
それでも、“私”が“私”であることに誇りを持てる決断が下せるか。
そこに、人間だけが持ち得る美意識の本質が問われているように思えるのです。
Sheila
Illustrated by Serafina
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