“いつかとオバケは出たためしがない”、と言うそうですね。

たった二つだけ例外があるとすれば、それはまず「生まれてきた以上、いつかはあの世へ行く」。

そしてもう一つは「羽生結弦も、いつかは現役選手を退く」ということです。

 

 

いつかはそんな日が来ること、そりゃ誰しも想定はしていましたよ。

してましたが、つい先日まではやたら「現役続行!」を強調する流れだったのに、何か不意打ち感というか、振り回された感のある展開に納得がいかないというか……

 

そう言いつつ、どこかでは「ああ、やっぱりか」的な、予感めいた複雑な心持ちを持て余す人、少なくないんではないでしょうか。

 

 

そのように気持ちの持っていきどころが無くてモヤってる人のために、今回は719日の羽生結弦選手による〈“決意表明”会見〉から見えた、“競技から降りる”ことの意義について考えてみました。

 

 
 

彼の輝かしすぎる活躍や戦績について、ここであらためて触れることはしません。

会見によれば、スケーターを引退するわけではなく、新しい章が始まる、さらに前進するという解釈で良さげな空気だし。

あわてたり、オロオロ歩く必要なんか、ないないないの、まったくない。

 

 

私見ですが、直近になるほど、彼がなおも競技の場に居ること自体にモヤッとした違和感がなかったと言えばウソになります。

要するに、これから台頭を狙う若手と同じフィールドにおいて、彼のような人がなすべきことはもう無いのでは……と言いますか。

 

完成度の高い競技用プログラムを見たい我々にすれば、強烈にさびしく残念な現実です。

しかも、目を逸らそうとするほど見えてきちゃうんですよね、こういうことって。

 

 

ただねー、本人が評価を願う部分と、競技の審査基準とがどんどん乖離していくとか、そこまでいく人ってのもそうそう居ないからなあ。

異次元とか圧巻とか、いろんなエクストリーム級の表現すらも超えて、もう“世界線が違う”んですよね。

誰も追いつけないところに独りでいる、本当の意味での孤高の王者、それが今の羽生結弦って人なの。

 

 

 

競技という場数を踏むほど、確かにアスリートは成長するのでしょう。

けれど、人生にはその時々で、つどふさわしい成長の場や役割というものがあり、時がきたら次のフェーズに移ることをためらうべきではありません。

これは、全ての人、社会の全てに言えることです。

 

他人との力くらべに意味を見出せなくなったとしたら、何のために競技に出るのか、ってなりますよね。

つまり彼にとってはもう、競技用のリンクすら狭い(アイスショーはもっと狭いけど)ということかも知れません。

 

 

そして賢明なフィギュアスケートファンならきっと、とっくに同じことに気づいていて、今回の彼の決断と決意を、心から支持&応援するに違いないと確信します。

 

 

 

 

 

しかしまあ、現役選手を退いたら途端に、グッズ販売だなんだと商業主義の魔の手が伸びてくるとは……

あるいは、どこぞの国からのコーチ招聘計画とか、冗談もほどほどになさいませだわよ。

どうか今後は、4Aジャンプの時の10倍は強くワキを締めてかかってほしいものです。

 

その他の要望は、低俗なバラエティ番組には出ないこと、付き合う人間を選ぶことかな。

……あっ、そうそう一番肝心なことを忘れてました、それは、

 

「変な女に引っかからないこと」

コレに尽きますね。

 

賢い彼のこと、それは杞憂かと……信じてるぜ、ゆづ。

人類未踏の栄光への道はまだまだ先へと続いてるんだから、どうか害虫防除対策はこれまで以上に念入りに。

 

さて、ゆづ様のスゴさについてあと少しだけ。

平昌五輪におけるの奇跡の連覇劇に感動した私は勝手に、研究書『最高かよ! ~羽生結弦と不思議のプログラム〈SEIMEI〉の謎~』(2019)を著わしました。

 

 

公にはしない私家版なのを言い訳に、画像をネットから拝借しまくるとかの呆れた造りなのですが、最終バージョンの完成までに1年半を費やした、結構な力作です。

自画自賛、終わり。

 

 

思えばその平昌と今年の北京、二つの五輪のはざまでは、これでもかというほどの試練や苦闘に見舞われたゆづ様も気の毒ながら、こちらまでメンタルやられたことも数知れずでした。

しかし、ふっ切れたような会見での笑顔を見るに、「人は修羅場の数だけ大きくなる」という名言を思い出さずにいられない私です。

 

 

たぶん彼はもう、全く別の地平に目を向け、照準を合わせる作業を始めているに決まってます。

なぜなら、従来の競技大会やアイスショーの形式は、彼の表現の場としてはもう機能しないと思われるから。

 

 

 

フィギュアスケートの世界に、“プロアスリート”という前例のない概念を創ろうとする羽生結弦の目論見が、いったいどんな形で結実するのか。

目下、注目はその一点に絞られているというわけ。

 

 

パイオニアにはパイオニアならではの、苦労や困難もあることでしょう。

でも、この人ほど間違いなく“持っている”人はいないのも事実です。

大丈夫、OK、ノープロブレム!

 

 

新たな挑戦へと走り出した今、何があろうと起ころうと、それでもやっぱり言わせてください、

「最高かよ! 羽生結弦」と。

 

Sheila

 

 

Illustrated by Serafina

 

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