日本女性は、実に無用なある種の“線引き”を自ら作って勝手に苦しんでいると、ずっと感じてきました。
ここで言う線引きとは、世間的に「ここまではギリセーフ、でもこれをちょっとでも超えたら即アウト」的な、極端な偏見に根ざした価値観あるいはモノサシのこと。
分かりやすいのが、年齢や体重、ボディサイズなど、数字による指標でしょう。
数字のデータは、ときに国をも動かすチカラがありますもんね。
現に、「○kg減に成功!」だけでも、セールスコピーとして成立するくらい。
センスの有無は別としてもです。
というわけでこたびは、多くの女性がスキスキ大好きな〈Mサイズ〉の概念と正体について、さらにそれを是・善・美とする、わが国特有の不可解極まる奇矯なビイシキについて、2回にわたり考察します。
記憶にある限りの昔から、世間には「Mサイズでない女は恥を知れ」的な謎の圧、というか暴力的な空気があった、それははっきり証言できます。
Lサイズ=大女、というか言外に女じゃないとでも言いたげなこの目線、今なら炎上必至だと思うでしょう?
……いやいや甘い甘い。
〈Mサイズ〉は即ち、“大きくない、フツーの(カワイイ)女”であることを手っ取り早く示す記号として、その地位は今なおいささかも揺らいではいませんよね。
そもそも、〈Mサイズ〉ならOK、だけど〈Lサイズ〉なんてバレたら恥ずかしいとか、意味分かんないし。
いつからそうなったの、誰が決めたの、これ一体何なの???
和服の時代は、小柄、なで肩に、小さな手足が美人の要件でした。
そういや、草履は小さめの文数(もんすう)を選べ、と私も教わったことがありましたよ~。
その理由がまたすごくて、「訪問先などで、玄関に女物の大きな草履が脱いで置かれているのはいただけないから」
……またしても現代人には理解不能……誰か助けて……
もちろん、自然に普通にMサイズの服がジャストフィットするのなら、問題はありません。
正真正銘の〈Mサイズ〉さんとして、どうか何恥じることなく堂々と生きていってください。
問題なのは、単に「Mサイズが好き」で、「何があろうと自分はMサイズである」とかたくなに信じてやまない、Mサイズではない人です。
自分の身体にフィットするサイズではなく、“好きなサイズ”を選んでる人って、ウソみたいだけどこれが意外に多いんですよぉぉぉぉ~~~!!!
学生の頃、いつもパツパツなブラウスばかり着ている自称Mサイズの人が、クラスにいました。
ある日、ついに脇の縫い目がほつれて裂け始めると、本人は「買った店に文句言ってくる!」と怒り心頭。
「それ、小さいんじゃないの?」という誰かのかすかな意見も、あまりの鼻息にかき消された光景が目に焼き付いております。
全ての女性が、「Mサイズじゃなかったら氏ぬ病」だなんて、もちろん思ってません。
昨今はさすがに、ラージ系サイズへの嫌悪感、劣等感はそこそこ薄まったのではとの淡い期待も、まあなくはないし。
ところが、ユニクロ店内などでは今でも、「あ、これダメ。あたしMだもん」と自信もボディも貫録たっぷりなお姉様に遭遇するんですよねー。
アパレルのレディースサイズ区分なんて目安程度、は常識かと思ってたけど、現実ってほんとにマジに奇妙で、甘くない。
一つでも大きなサイズにシフトしようもんなら人生終了、とまで言わんばかりのその勢い、見てるこっちが恐怖を覚えるレベルだよ、と言いたいのです。
マジでもう、そうまでして〈Mサイズ〉に執着する理由が分からない、それだけなんです。
根拠の無いサイズへのこだわりは、自分自身でいられていない証拠なばかりか、それを自分に許していないという意味で、ダブルに深刻だと言えるでしょう。
自立を阻むこの厄介な“Mサイズの呪い”、健全なる美意識の最大の敵であることは、とりあえず間違いありません!
〔次回に続く〕
Sheila
Illustrated by Serafina
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