Guten Tag
金曜日のノヴァーリスです、こんにちは。
就農物語3rdシーズン、T農園篇。どうぞ!

 


 

T農園とはなにか。
「となみ地方の代表的な農園」である。
どういうことか。

江戸時代、農民の人口は全人口の80パーセント以上を占め、江戸時代を通じて2600~2700万人を上下して変わらなかったという。
現在は152万人。しかもこの五年で46万人減った日本の人口は1、263億人。
ものすごい減少スピードである。

富山は霞ヶ関の言うことを日本一聞く県なので(いつか機会があれば論じます『勉強県富山県は実は偽りだった?!』)政府の「農業は非効率的だ! 兼業農家なんて撲滅すべし! 一部の力ある農家に富と農地を集積さすべし!」という言葉に、真面目に農地の集積を行い、水路と田んぼを整備し、最先端の農業を行ってきた。

選択と集中、といえば聞こえはいいが、農業は生存にかかわる。
この点ひとつとっても、ITや自動車産業とは違うことがおわかりであろう。

結果、となみ地方では兼業農家がほとんどいなくなった。
営農組合で耕してもらうか、大きな個人農家で耕してもらうか。
現在となみ地方では営農組合や、営農組合の役割を演じる大規模農家が約100ヘクタールを耕し、大きな農家さんが50ヘクタールを耕している。そして消滅寸前の個人農家さんが数ヘクタールを耕しているものの、十年以内には全て離農・吸収、という見通しである。
つまりT農園とは地域の農地を請け負う、約50ヘクタール規模の農家さん、ということだ。
ちなみに1ヘクタールと言われてもよくわからないとおもうのですが、簡単に言うと、100メートルかける100メートルが1ヘクタールです。
畳5482枚分。
25メートルプール36個分。
東京ディズニーランドが51ヘクタールなので、ざっくりと、となみ地方では一家族がディズニーランド丸々耕していると思ってください。
なかなか大変。


そんなT農園に四人目の労働力として僕は雇われたわけで。
T農園から見る景色は絶景と書いたが、自然は牙をむく
すぐ裏手に山があり、春にそこから吹き下ろす風は超暴風
六甲おろしの比ではない。
瓦は空を舞い、ぼろ家は倒壊し、橋の上ではトラックが連続横転。
だもんだから、育苗中のビニールハウスは毎年危機にさらされる。
なるべく風を受けないよう、高さも低くし、すじかいもたくさん入れ、パイプ数本ごとにビニールバンドで止め、出入り口にはベニヤ板を張り、木の棒でおさえる。
初めてハウスを設営したときには、こんな大げさにする必要あるのかな、と思ったほど(その後、自然のおそろしさを知ることになる)。

ハウスは冬の間、雪が積もると倒壊してしまうので、ビニールを外す。
ハウスにビニールを張ると、そろそろ春だなぁと感じる。
パイプにビニールをかぶせ「ゲジゲジ」と呼ばれる針金のようなもので編み込んでいく。
R営農組合においては楽しい作業であった。編んでいって疲れると交代。また疲れると交代。「よっしゃー! 俺にまかせとけー!」といって数本編んで「交代!」と叫び、みんな爆笑、なんてシーンもあった。
一方T農園では・・・ノヴァーリスの一人作業。
会長夫人(通称かあちゃん)がゲジゲジをよこすので、それをひたすら編んでいく。
片側が終わると、もう片側。
ゲジゲジが終わるとハウスバンドを止める作業(かあちゃんと二人で)。
そんなんだから、一日二棟くらい仕上げるのが限界。
R営農組合では全員総出で一日で終わったから、これはなかなか大変だぞ、ハウスを眺め、パンパンになった手をおさえながら、戦慄したのだった。 

 

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(これがビニールを止めるゲジゲジである。虫ではない)