こどものみかた

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大阪寝屋川の小松病院小児科の林です。小児医療、感染症、救急医療や趣味の話など、役に立ったり立たなかったりする蘊蓄を適当に語ります。

世の中には何百万円、何千万円もかけて美容整形する人がいるのですから、簡単に痩せられる薬があれば、たとえ自費で高額でも使用したくなるのは人の性(さが)というものでしょう。私も年をとってからあまり気にならなくなりましたが、若い頃には外見のコンプレックスは確かにありましたね。もっと身長が欲しいとか、もっと髪の毛が欲しいとか・・・。ただ痩せることは運動量を増やせば出来ましたし、それに私の場合は痩せてしまうと頬の肉がげっそりと落ちて貧相に見えてしまうので、薬まで使って不健康に痩せたいとは思いませんでしたが。今日ご紹介する記事は、そんな夢の薬(?)である肥満治療薬の不適切な使用によってエライことになった症例の紹介です。まずは抜粋して引用を(あまり専門的になってもアレですから、症例の詳述はとばします)。

 

『日本では、GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名マンジャロ)の美容・痩身目的での適応外使用が問題となっている。厚生労働省は6月16日、同薬およびGLP-1受容体作動薬の適正使用に関する連名課長通知を発出するに至ったが、健康被害への懸念がある。大阪けいさつ病院糖尿病内分泌内科の監物諒相氏、沖田朋憲氏らは、美容クリニックで適応外処方されたチルゼパチドを投与後に正常血糖ケトアシドーシスを呈した20歳代女性の症例報告をJCEM Case Rep2026; 4: luag054)に発表。適応外使用に伴う低栄養や脱水を介した重篤な代謝合併症について、あらためて注意喚起した。両氏のコメントと合わせて紹介する。

 

チルゼパチドは、強力な血糖管理および体重減少作用が示され、国内外で2型糖尿病および肥満症(肥満症での商品名ゼップバウンド)の治療薬として承認されている。しかし、美容目的での適応外使用や不適切な流通が問題となっており、糖尿病や肥満がない集団での有効性と安全性は確立されていないことから、予期せぬ健康被害が懸念される。

 正常血糖ケトアシドーシスは、高血糖を伴わない状況で血清ケトン体上昇を伴う高アニオンギャップ性代謝性アシドーシスを特徴とし、血糖値250mg/dL未満と定義される。原因としてはSGLT2阻害薬使用中の糖質摂取量の低下、長時間の絶食、急性疾患、手術などに加え、非糖尿病者では飢餓状態、妊娠、過度の飲酒などが挙げられる。監物氏らは今回、美容目的でチルゼパチドを使用した糖尿病のない非肥満女性に発症した、正常血糖ケトアシドーシスのまれな症例を報告した。

 

~中略~

 

監物氏らは「本症例のケトアシドーシス発症には、飢餓関連ケトーシス、ストレス誘発性代謝反応、チルゼパチドの薬理学的作用が複合的に関与したと考えられる」と指摘。「重度の消化器症状による食事摂取量の低下とエネルギー不足が急性異化状態を惹起し、グルカゴンやカテコールアミンなどの拮抗調節ホルモンが増加して脂肪分解を促進。同薬のGIP/GLP-1受容体二重作動作用が脂質利用やNEFA放出を介して、ケトン体産生を増強した可能性がある」と考察し、想定される機序を提示した(図)。

 

図. 症例におけるケトアシドーシス発症に寄与した可能性がある機序

(図、表ともJCEM Case Rep 2026; 4: luag054)

 同氏らは、日本人若年女性におけるボディーイメージのゆがみや瘦せ願望など、社会文化的環境の影響にも言及し、「美容・痩身目的でのチルゼパチドの適応外使用は、糖尿病や肥満のない人でも、強い消化器症状や摂食低下が重なる状況では、ケトアシドーシスを来しうる可能性を示唆した。臨床医は適正使用を促進するとともに、潜在的な代謝性合併症について認識を高めるべきである」と注意を促している。』

 

以上です。ケトアシドーシスは糖尿病で異常に高血糖になった際にも見られますが、飢餓状態でもよく見られます。急性胃腸炎などで全く食事摂取が出来ないとケトン体が増えるんですね。また小児では周期性嘔吐症と呼ばれるケトン体が増えやすい病気もあり、小児では高血糖を伴わないケトアシドーシスは珍しいものではないのですが、この症例では肥満治療薬を飲んで強い消化器症状が出て、飢餓状態に陥ったものと考えられます。なんて不健康な痩せ方だろう!!! そもそも人間が食べたら太るのは、エネルギーを蓄えるという極めて合理的な生理作用なんですね。ある太った方の名言で、「何のために太っているのか?」と聞かれて「念のため」と答えたというものがあります。そりゃいきなり大災害や戦争が起こったりして食うに困るようになる可能性もありますから、念のために太っておくのは良いことなのかもしれません(???)。まあそれは冗談として、高度の肥満や高血糖でもない限り、薬で無理やり痩せるというのは絶対にやめておいた方が良いでしょう。

美容目的のチルゼパチド使用後に正常血糖ケトアシドーシス | MT Case Reports | Medical Tribune