こどものみかた

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大阪寝屋川の小松病院小児科の林です。小児医療、感染症、救急医療や趣味の話など、役に立ったり立たなかったりする蘊蓄を適当に語ります。

もうすぐ今年も終わりですね。今年の私の仕事として一番大きかったのは、新型コロナ、インフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、百日咳、マイコプラズマなどの複数の病原体を同時に検査できるPCR機を導入したことでしょうか。極めて感度が高い上に1度の検査で上記病原体が検査出来るという優れものですが、1回の検査に30分程度かかり且つ複数検体を同時に検査出来ないため、あまり多くの検査が出来ないので症例を選ばざるを得ないのが難点です。まあそれでも軽症例はそもそも検査する必要が無いし、インフルエンザでも発症から半日以上経っていれば迅速検査もそこそこ使えるのでそんなに困ってはいませんが。あと個人的には長女が大学進学できたことですね。再来年には次女が大学受験になりますが、無事通れば一安心かなと思っています。

さて、本日ご紹介する記事は、風邪に関して日本とフランスの違いが書かれたものです。長文なので抜粋して引用します。

 

『彼女は、そもそもフランスでは風邪をひいたくらいでは健常者は医療機関を受診しないと言います。フランスでは受診代が高くつくのかというと決してそうではありません。受診時の費用は日本よりも圧倒的に安いのです。というより、実際にはほとんど無料になるようです。フランスの医療制度は、まず日本のような公的保険があって原則として全員が加入します。受診時には自己負担がかかりますが、一般的なフランス人であれば「ミュチュエル(Mutuelle)」と呼ばれる民間保険に加入していますから事実上の自己負担はゼロになります。

 にもかかわらず、フランスでは風邪をひいたくらいでは健常者は医療機関を受診しないというのです。もちろん、単なる風邪でも重症化するかもしれない高齢者や(目安として5歳未満の)小児、あるいは免疫能が低下している人の場合は速やかに医療機関を受診し、適切な検査を受け、必要に応じて治療薬が処方され、場合によっては入院の手続きが進められます。しかし、フランスでは常識として、健常者が風邪くらいでは医療機関を受診しないそうなのです。健常者が風邪をひいて症状がつらいなら「自宅で安静にしておく」が最善の治療と考えられているというわけです。

 ところが、日本に来てみると、20代や30代の若者が、学校帰りや仕事帰りに単なる風邪で受診して検査や薬を求めます。日本に初めて来た彼女の目には、このような光景がかなり異様にうつるようです。

 日本では健常者が風邪症状で医療機関を受診したとき、大半の人がインフルエンザや新型コロナウイルスの検査を求めます。2017年のコラム「医師がインフルエンザの検査を勧めない理由」(※1)でも述べたように、私自身はこのような検査を勧めることはあまりありません。検査をしなくてもインフルエンザの診断が下せることもあり、また、たとえインフルエンザであったとしても軽症の場合は検査をする意味がほとんどないからです。以前当院に研修に来ていた研修医から「こんなに(インフルエンザなどの)検査をしない先生は初めてみました」と言われたこともあります。しかし、そうはいっても、実際には「上司から検査を受けるように言われた」とか「家族が心配するから」といった理由で検査を希望する人も少なくなく、結局、当院でも検査をすることもまあまああります。

 シャーリーさんはこのような日本人の考え方を奇異に感じています。彼女の視点では「自宅で安静にしているのと、わざわざ医療機関にやってきて検査を受けるのとで、予後にどれだけの差があるというのか。むしろ自宅にいる方がお金と時間を節約できるのではないのか」となるわけです。まして、日本の場合はフランスと異なり、受診すれば3割の自己負担が課せられます。

 

 シャーリーさんが日本の風邪診療を不思議に感じているのは検査だけではありません。治療も、です。フランスではそもそも抗インフルエンザ薬を使用することがほとんどないそうです。もちろん、高齢者や小児、免疫能が低下している患者の場合には使用することもあるのですが、その場合も「オセルタミビル(タミフル)」を使い、ゾフルーザ(塩野義製薬が発売している1回飲むだけの抗インフルエンザ薬)やイナビル(第一三共が発売、1回吸入するだけのタイプ)などという抗インフルエンザ薬など聞いたこともないと言います。実際、調べてみると今や日本の抗インフルエンザ薬のtop twoとも呼べそうな「1回タイプ」のゾフルーザとイナビルはフランスを含む欧州では発売されておらず、日本以外の国や地域ではほとんど使われていません。つまり、日本では標準的と考えられている治療法は世界でみればまったく標準ではなく日本が異端なのです。

 

そして、私自身も抗インフルエンザ薬はあまり処方していません。高齢者、小児、免疫能が低下している人には積極的に推奨していますが、基本的に健常者には「使わなくてもいい」と説明しています。ただし、2016年のコラム「『休めない』人はインフルエンザの薬を使うべきか?」で述べたように、上記で述べた検査と同様、「一日でも早く職場に復帰したいから」あるいは「家族にうつしたくないから」といった理由で抗インフルエンザ薬を求める人に対しては希望を聞くようにしています。当院では全体でみればインフルエンザの患者さんの7割くらいに抗インフルエンザ薬を処方し、若年に限ればせいぜい3~4割程度、大学生の場合は5人に1人くらいです。先述した、以前当院に研修に来ていた研修医は「こんなに抗インフルエンザ薬を処方しない診療は初めてみた」と言っていました。なお、学生の場合は学校保健安全法に従わねばなりませんから、発症すれば(発症した日をゼロ日とカウントして)5日間は登校できません。よって、どっちみち休まねばなりませんから「一日でも早く治したい」と考える必要もないのです(なかには早くバイトに復帰したいから……、という学生もいますが)。

 ではワクチンはどうでしょうか。シャーリーさんによると、フランスでは高齢者や免疫能が低下する疾患を持っている人には無料ワクチンの案内が届くそうです。他方、健常者の場合は有料となり、一部は民間保険で補塡(ほてん)されるかもしれないが接種を受ける人はそう多くないだろうとのことです。また、これは新型コロナウイルスでも同様で、コロナワクチンが登場したときにはできるだけ大勢の国民が接種を受けるよう促され、医療者の場合は接種を受けていないと医療機関で働けなかった時期もありましたが、現在は医療者の接種率も低下しています。新型コロナはオミクロン株に置換されて以降、「単なる風邪」のような扱いです。』

 

以上です。まあこれはよく言われていることですね。日本はアメリカと比べて風邪などの受診が圧倒的に多いと言われていますが、これには保険制度の違いもある(アメリカでは医療費が高額)のだろうと思っていましたが、記事ではフランスでは実質的に殆ど無料で受けられるのに、風邪では受診しないとのことですので、やはり文化、習慣の違いが大きいのかなと思いました。ぶっちゃけ風邪は勝手に治りますし、いわゆる「風邪薬」は症状を多少軽減するだけで原因ウイルスをやっつけるわけじゃないので、風邪薬を飲もうが飲むまいが同じぐらいの期間で治ります。さらに言うと発熱は体の防御作用であり、熱があるときの方がウイルスの増殖が抑えられるので、元気があれば敢えて解熱剤を使わないという選択もあります。勿論、熱でぐったりして水分も摂れないようなら解熱剤を使う方がベターですが。だからCMの「効いたよね、早めのパ〇ロン」というのは私に言わせれば大噓で、効くかボケ(!)という感じです。

あとインフルエンザの検査もそうですね。微熱のインフルエンザも無いわけではないんですが、そもそも普通の風邪と変わらんインフルエンザを診断して治療する意味がよく分からんというところがあります。基本的には私は咳、鼻、微熱で元気ならインフルエンザの検査をしないことを勧めますが(殆ど陽性にならず痛いだけなので)、どうしても検査してほしいという依頼があれば検査しています。子どもが可哀想だなと思いながら。あとインフルエンザの検査は発症から間がないとあまり陽性になりません(偽陰性が多く出ます)。そのため発症から間がない方は基本的に次の外来での検査をお薦めていますし、また大流行であれば臨床症状のみでインフルエンザと診断することも多いです。そもそもインフルエンザだから検査しなきゃいけないわけでもなく、勿論薬を飲まないといけないわけでもないですから。記事でもフランスでは殆ど抗ウイルス薬は使わないようですね。

更に抗ウイルス薬に関してはフランスではイナビルもゾフルーザも使われていないようです。そもそもイナビルはプラセボと比較して効果に差がなかったため、欧州の治験を通っていませんので処方されることは有り得ないわけですが。実は私もそのためにイナビルを処方することはありません。欧州の治験に通らなかったような薬を敢えて選ぶ意義を認めませんので。ゾフルーザに関しては、インフルエンザB型に対してはタミフルの耐性化が進んでいるため、私はこちらを出すことが多いですが、A型に対してはタミフルと治療効果に差は認めないため、タミフルを第一選択としています。効果に差がないのに敢えて新薬を選ぶ意味が見出せませんので。

40℃近い高熱が出てしんどい時や4日以上発熱が続くときは勿論受診していただくと良いのですが、軽い風邪程度なら、やはり家で安静にしていることが一番だと思います。

日本とフランスでは大違い! 風邪をひいた時の対処法 | 毎日メディカル