宇宙ウェザリングの酷かった話 | hit manの独白日記

宇宙ウェザリングの酷かった話

以前もこのブログで書きましたが「宇宙ウェザリング」の件です。

 

地球などの重力下でのMSへのウェザリングは、まあお手本がいくらでもあるというか、ネットでも画像で探せるのでウォッシングやチッピング、ドライブラシ等で表現できますし、現在では模型メーカーから便利なツールも沢山出ています。

 

 

しかし、宇宙ではどんな「汚れ」が生じるのかは、想像が難しいものです。

 

参考にすると言っても帰還したスペースシャトルの画像くらいしかありませんが、汚れているように見えるスペースシャトルの外装は、あれは大気圏を突破した時に付いた「焼け」なんで、宇宙空間で付いた「汚れ」ではないんですね。

 

 

とにかく、ガンダムに登場するMSはご存じの通り沢山の種類がありますが、物語上、宇宙戦しかしたことのないMSもある訳です。

 

 

そんな宇宙戦用のMSをリアルに仕上げたいからウェザリングをしたい!と思っても、例えば地上でしか付かない「汚れ」を施した場合、まあ見る人によっては「あ、こいつウェザリング知らねえな」とマウントを取られる訳です。

 

モデラー上級者の諸兄らも経験があると思いますが、自身の初期の頃の作品にそんなものがあれば、顔から火が出るほど恥ずかしいものです。

 

私も汚しまくったサザビーを見て「すまなかった」と謝るばかりです笑

 

 

■宇宙ではあり得ない汚れ

 

①泥・砂汚れ

これは説明するまでもなく、宇宙空間にないものが付く訳ないということです。型式に「G」が付く陸戦型のガンダムやジム、デザートカラーのジオン系MSにはお似合いの汚れですが、宇宙戦用のMSには絶対に付かない汚れです。

 

②雨だれ・オイルだれ

重力のない宇宙空間では「流れる方向」がありません。そもそも関節部分からにじみ出たオイルみたいな液体は、宇宙空間では即ガス化します。というか、関節部分からオイル漏れするような精度の悪い機体は放っておいたら直ぐに壊れます。

 

③錆

真空状態の宇宙空間では金属が錆びる要因がありません。よって陸戦用のMSには自動車板金のようにまずは下塗りに防錆塗料を塗ってから上塗と重ねますが、宇宙戦用には下塗りの重防食は要らないってことですね。まあ、そもそも宇宙世紀の塗装がまさかスプレーガンで塗っているとは思えませんが笑

 

 

■微妙な汚れ

 

①紫外線によるダメージ

宇宙空間では地上より遥かに強烈な紫外線を浴びることとなり、それは塗膜を著しく劣化させ、その結果「退色」するといった現象が起こると考えられますが、宇宙世紀の塗料メーカーがそんなヤワな塗料をMSに塗るか?と思うんです。

恐らく「高UV対応塗料」みたいなものを開発して塗っていると思うんです。だって、百式なんかは対ビームコーティング何とかエマルジョンというものを塗っているから金色なんでしょ?

ビーム弾いて紫外線は弾けないってないでしょ笑

 

 

②スラスターやバーニア周りの煤汚れ

煤とは有機物の不完全燃焼によってできる炭素の黒い微粒子ですが、宇宙世紀のMSの推進剤って何なんですかね?

アポジやスラスター、バーニアによって使用燃料が違うかもしれませんし。

いずれにせよ、1/100や1/144スケールのプラモだと、この煤汚れ表現は避けた方が無難でしょう。

 

 

 

■では実際、宇宙空間ではどんな汚れになるのか

 

ぶっちゃけた話、現在の人工衛星とか汚れていると思いますか?

もう何年と宇宙に漂っているあの人工衛星です。

私も動いている人工衛星を直視で見たことはないんですが、恐らく「汚れてない」んですね。

長いものになると10年も運用される人工衛星が、地上を走る自動車のように、ちょっと雨でも降ればすぐに汚れるといった感じだと、定期的に外装の掃除をしないと運用に支障をきたすはずなんです。

でも無人の人工衛星にお掃除ロボットを積んでいるなんて聞いたことがありません。

ただ、だからといって戦闘マシンであるMSが宇宙で使用する分には全く汚れない、という訳ではないとも思います。

では、どんな汚れか?というと、考えられるのはデブリによる衝突痕や戦闘によるダメージ痕です。

でも、これって「汚れ」というより「変形」ですよね。

 

 

 

■ガンプラウェザリング界の王道

 

それと最後に、ウェザリングといえば「ハゲチョロ」ですよね。

技法でいえば「チッピング」です。

でも、これにも私は物申したい訳です。

 

塗装が剥がれやすそうなエッジや、部位でいうと膝や足、あとは武装なんかにも入れるとかっこいいチッピングです。

しかしですね、現在の自動車板金塗装でも例えば自動車同士の衝突事故で、バンパーやフェンダーがガッツリ凹んでいても、塗装が剥がれて地金って見えます?

見えないですよね。ウレタン塗料でも。

それが宇宙世紀の未来の塗料で「少々擦ったから」って剥げるんですかね?

というか通常運用で剥げるくらいなら、百式の対ビームコーティング何とかなんて意味ないですよね。

 

 

■まとめ

 

結局、宇宙戦用のMSはほとんど「汚れてない」という結論になりました。

強引に故意に汚そうと、例えば母艦のドックで思い切りオイルをぶちまけたところで、液体のオイルは瞬時に気化するので汚れにはなりません。

ましてや、製造されてから実戦投入まで期間が短く、且つ、総戦闘時間が1時間も戦ってなさそうな主人公機が、エッジが傷だらけで地金が露出し、頭部や胸部がデブリ痕だらけ、とかまずあり得ないでしょう。

 

だからといってウェザリングをガッツリ施した宇宙戦用MS作品を非難している訳ではありません。

 

ただ、これだけは酷いなと思ったので最後に記します←ココでタイトル回収

 

 

高橋名人、いや、川口名人の塗りテクチャンネルという動画で「宇宙ウェザリング」を紹介しているんです。

 

4年前の動画です。

 

「名人」というのが形骸化して、将棋の名人とは丸で次元が違うのは皆さんご承知でしょうが、この川口名人はあのガンプラグランプリ(GBWC)の実行委員長でもあるんです。

 

そんな権威のある方の宇宙ウェザリングです。

 

名人が解釈する宇宙での汚れ。気になりますし期待しますよね。

 

ところがですね、やってることはクレオスのウェザリングカラーでの煤汚れ(しかも肩)と、シルバーを下地に吹いて上塗し、デザインナイフでエッジ部分を削るチッピングのみ。

 

いやいや、それって重力下のウェザリングと何が違うの?

 

しかも「私は宇宙に行ったことがないので」と、保険を掛けてからの実技。

 

いやいや(2回目)、日本で宇宙に行ったことあるの数人ですから。

 

名人が行ったことないくらい、聞かんでも知ってますわ。

 

それより、俺達が聞きたいのは名人の宇宙汚れの解釈なんだよ。

 

ガンプラで飯食わせて貰って来たんでしょ?

 

だったら、ユーザーやファンから「宇宙の汚れってどんな風にしたらいいんですか?」って質問くらい来るのは容易に想像できるし、その回答を用意するために、宇宙に詳しい人にご教授願うとかして知識を積んでおくのがあなたの仕事ではないんですか?

 

つか、私があなたの立場なら、喜んで日本人宇宙飛行士の方にアポとって話聞いてくるわ。

 

それができないなら、大学の教授とかJAXAの人とか。

 

とにかくね、動画のそれを「宇宙ウェザリング」なんて呼ぶのは酷い話だと思いますよ。