父が亡くなって

今日で25年になります。



ハワイの大学にいた時に

父は亡くなったのですが、



大学に通い始めた頃まで

確執があり、あまり仲が良い状態では

ありませんでした。



しかしある出来事がきっかけとなって、

彼との関係が変わっていったのです。





その頃、


父の事業がどうしようもなくなり

倒産する事になったのですが、

父は心労のため倒れて


危篤状態になったのです。



慌てて日本に帰って、

大きな荷物を持ったまま

父の入院していた病院へ直行すると、



小さい頃、大きく見えた身体や手は

細く小さく、力弱く見えたのでした。


 




容態は何とか持ち直し

退院して自宅療養になって、

僕がハワイの大学に戻ってしばらくした頃、



生まれて初めて、

父から手紙を受け取ったのです。


 




心臓発作の影響で腕を動かすのもままならなくて

文字を書くのも大変だったろうに

数ページに渡って



「ありがとう」



と感謝の気持ちがいっぱい書いてありました。



読んだ時は、手が震えて

思わず涙が流れ出して止まりませんでした。




「何でこれまで、こんなに嫌っていたんだろう。

どうしてこれまで分かち合えなかったんだろう。

維持を張っていたのは、僕の方だった。

ごめんなさい。そしてありがとう」



あの時は

そんなふうに素直に思えたのでした。


 




倒れたのが夏、

手紙を受け取ったのが秋、



そして

僕がクリスマス・カードを送ったのが冬でした。



手作りのお手製で、

ヤシの木をツリーに見立てた可愛いカード。




父がそのカードを受け取ったのが

クリスマスに1日遅れた 12月26日、



そして、再び倒れて

救急車で運ばれたのが翌日の27日で



そのまま父は息を引き取ったのです。


 




海外に行くと親の死に目に会えない。

そう言われていて、

覚悟していた事だったのに、



それでも心は

どうしようも無く落ち着かなくて、

真っ暗な中、近くのビーチに行くと、



暗闇の中に父の顔が浮かんできて

波の音が父の声に聞こえてきたのです。


 


ハワイのビーチには、

遠く離れた日本からの言葉が辿り着くらしく、




「早く帰ってこい。いいから早く帰ってこい」



そんな声が聞こえてきました。


 




それから日本に帰って母に、


 


「お父さんはね、あなたから受け取った、

数行しか書いてないクリスマス・カードを

何度も、何度も読み返していたんだよ」



そう伝えられました。


 




「気持ちを言葉にして伝える」

それが どれ程難しいのか、

僕には解ります。


 


それまで心で思った事を


うまく言葉に出来なくて


 


父に伝えられなくて


いつも逃げていた自分が


 


あの時、


自分の気持ちを言葉にして伝えられて


本当に良かった


と思うのです。




たった数行しか書いてない

クリスマス・カードを受け取って

亡くなる直前に心動かされる人がいた。


 


その事を知った今は

自分が素直になって

心を通じさせる大切さ



そして生きている間に


言葉にして伝える事の大切さを

身に染みて理解したのです。


 




もし、あなたが


誰かと仲が悪くて

心を通じ会えない相手がいるなら、


 


どうかお互いに、


言葉が交わせて


心が繋がるようにと


願ってやみません。



そうしたらきっと


僕がそうだったように、


 


あなたも前に進めて


幸せな気持ちになれると

思うのです。