6月14日、増額した年金が振り込まれます

 

6月14日は、4,5月分の年金が振り込まれる日です。

15日が土曜日なので前倒しです。

年金を受けている方のお手元に、今年もまた、ハガキサイズの「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」が届きました。

おや、だいぶ増えてるな、と感じた方も多いかもしれません。

今年度は、前年度から2.7%の増額となりました。

 

その結果、老齢基礎年金の満額は、68歳以下の方は月額68,000円、69歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれの方)は67,808円となりました。

昨年度より、毎月それぞれ1,750円、1,758円の増額です。

年齢によって満額が違うのは、前年度の改定率が、新規裁定者と既裁定者で異なっていたためです。

 

年金額改定のルール 今年度の場合

 

年金額の改定は、

新規裁定者(67歳以下、昭和32年4月2日以降生まれ)

→名目手取り賃金変動率によって改定

既裁定者(68歳以上、昭和32年4月1日以前生まれ)

→物価変動率によって改定

というのが、原則です。

 

ですが、賃金が物価より上がっていないのに、年金を物価に合わせて増額するのは問題があります

年金は現役世代から年金世代への仕送りとも言える賦課方式であり、必要な財源は、その時々の保険料収入から賄われ、その保険料は賃金によって決まります。

賃金より高い物価に合わせて年金額を増やすと、年金財政の悪化に繋がるわけです。

 

そこで、2004年の年金改革で、物価よりも賃金の延びが少ない場合は、高い物価に合わせず賃金の方に合わせる、という特例ルールが導入されました。

 

では、今年2024年度の指標を見てみましょう。

●物価変動率 +3.2%

●名目手取り賃金変動率 +3.1%

●マクロ経済スライド調整率 ▲0.4%

 

※名目手取り賃金変動率とは

2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に、前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたもの

今年度は

実質賃金変動率(▲0.1%)

+物価変動率(+3.2%)

+可処分所得割合変化率(0.0%)

=名目手取り賃金変動率(+3.2%)

となりました。

 

※マクロ経済スライド調整率とは

年金財政を長期的に安定させるため、支給額の増額幅を抑える仕組み

公的年金被保険者数の変動と平均余命の伸びに基づいて、物価や賃金の伸びより増額を抑える

今年度は

公的年金被保険者総数の変動率(▲0.1%)

+平均余命の伸び率(▲0.3%)

=スライド調整率(▲0.4%)

となりました。

 

物価変動率>賃金変動率なので、ルールにより賃金変動率が採用され、そこからスライド調整率が引かれて、

今年度の改定率は

+3.1%-0.4%=+2.7%

の改定となったのです。

 

年齢によって異なる基礎年金の満額

 

少し細かい話になりますが、今年度は、改定は2.7%の増額とされているにも関わらず、老齢基礎年金の満額が、年齢によって2通り発表されています。

 

昨年の2023年度

賃金変動率>物価変動率だったため、

原則通りで

新規裁定者は賃金変動率

既裁定者は物価変動率

で改定されました。

その結果、

新規裁定者 +2.2%

既裁定者 +1.9%

という結果になり、両者は異なる改定となりました。

 

今年度は共に同じ+2.7%ですが、基礎年金の満額が異なります。

しかも、昭和31年4月2日~昭和32年4月1日生まれの方は、既裁定者でありながら、新規裁定者と同じ68,000円/月となっています。

その原因は、これら68歳の方は、昨年度は新規裁定者で、他の既裁定者の方と異なる改定率だったことにあります。

今後も新規裁定者と既裁定者の年金額改定率が異なるケースが生じるごとに、翌年の満額が異なるという事態が生じることになります。

 

物価高に追いつかない年金増額

 

昨年度に引き続き、年金額は増額しましたが、マクロ経済スライドの調整によって、物価や賃金の上昇には届いていません

現役世代についても、賃上げが物価の上昇に追いついていないため、節約志向や買い控えが増え、消費者行動が抑制されていると言われています。

さらに年金は、低い賃金に合わせる上に、マクロ経済スライドによる減額もありますので、年金が増えたからといって、ゆとりができるわけではないと感じる方も多いと思います。

 

マクロ経済スライドは、いつまで続くのでしょう。

導入されたのは2004年と、もう20年も前ですが、物価や賃金が下落するデフレ下では適用されないというルールのため、まだ4回しか適用されていません

「マクロ経済スライによる給付水準調整は、国民年金と厚生年金の双方において、それぞれ財政が均衡するまで行う必要がある。」(厚生労働省)

 

厚生労働省の試算によると、厚生年金が2025年度に終了と予測されるのに対し、国民年金(基礎年金)は2047年度と見込まれています。

マクロ経済スライドによる減額が長引くと、将来の年金額が現役世代の収入に比べて大きく下がってしまう(所得代替率)という心配な見通しもあり、厚生年金と基礎年金の終了時期を統一する方向が示されています。

 

年金財政の健全化が一刻も早く実現し、将来世代が安心して年金を受け取れるようになるためにも、年金受給世代はここしばらくは、年金減額を受け入れる必要がありそうです。

 

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