日本の将来推計人口

 

少子化に歯止めがかかりません。

2022年の合計特殊出生率は、過去最低の1.26、出生数も初めて80万人を割りました。

今年に入っても、出生率の減少は続いています。

 

※合計特殊出生率とは

15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が仮にその年次の年齢別出生率で一生の間に産むとしたときの平均子ども数に相当します。

 

また、未婚者が希望する子どもの数も減少しており、初めて2人を割りました。

2023年に18歳となる女性の場合、生涯子どもを持たない人が、最大42%に達するという推計も出ています。

これは、先進国でも突出した水準だそうです。

 

国立社会保障・人口問題研究所は、2020年の国勢調査の数値をもとにして、「日本の将来推計人口(令和5年推計)」を公表しました。

予測値は、2021年から2070年まで。

参考として、2120年までの人口についても計算されています。

 

これからの人口がどう推移するかは、単純に予測できるものではありません。

出生数、死亡数、さらに国際的な人口移動が、今後どうなるかによって、予測値が変わってきます。

将来推計人口は、出生数と死亡数の推移を、それぞれ「多い(高位)、中ぐらい(中位)、少ない(低位)」の3通りを仮定し、それらを組み合わせて9通りの推計を行っています。

 

2056年に日本の総人口1憶人割れ

将来は1.3人で高齢者1人を支える時代に

 

出生数も死亡数も中ぐらい、と仮定した推計(中位仮定)によると、2056年に日本の総人口は1憶人を割ると予想されています。

また、65歳以上の人口は、第二次ベビーブーム世代が65歳以上になる2043年に3,953万人でピークを迎えた後は減少に転じ、2070年には3,367万人になります。

それに伴い、65歳以上の人口割合は、2020年現在「3.5人に1人が65歳以上」のところ、2038年には「3人に1人」、さらに2070年には「2.6人に1人」が65歳以上になると推計されています。

 

前述のように、65歳以上の人口は2043年にピークを迎え、その後減少します。

それにもかかわらず、0歳~64歳の人口の減少が続くために、65歳以上の人口割合は、今後50年の間、上昇を続けることになります。

 

そして、15歳~64歳のいわゆる「生産年齢人口」と言われる現役世代は、2020年に2.1人で高齢者1人を支える現状から、2038年には1.7人、2070年には1.3人で高齢者1人を支えなくてはならなくなる、と推計されています。

 

介護の担い手不足が深刻化

 

1947年~1949年に生まれた世代は、第一次ベビーブーム世代とか団塊世代と言われ、年間出生数は約270万人でした。

2025年には、この世代がすべて75歳以上となります。

それに伴い、介護や医療といった社会保険費の負担増や、介護の担い手不足が問題視されています。

これは「2025年問題」と称されていますが、問題は2年後に留まらないようです。

 

第二次ベビーブーム世代(団塊ジュニア世代)は、1971年~1974年生まれで、年間出生数は200万人を超えていました。

この世代の多くが80代となる30年後には、要介護、要支援となる人に対して、介護職員が確保できず、未曾有の介護難民時代がやってくるという記事が、日経新聞に掲載されました。

「400万人の「介護難民」支え手120万人不足」2023年6月19日 日経新聞

 

それによると、2050年度には、介護保険の要介護、要支援となる人は941万人、今より4割近く増え、それに必要な介護職員数の6割しか確保できない。

そのため、要支援を中心に400万人は、介護職員のケアを受けることができず、「老々家族介護」にならざるを得ない、とのことです。

また、仕事をしながら介護をする「ビジネスケアラー」も増え、経済的な損失は9兆円に達すると言われています。

 

介護の担い手不足で、頼りになるのは、海外人材、そして人工知能やロボットです。

特にこれからは、ITやロボットへの投資を進め、見守りや身体介護をロボットに任せる時代が来る。また、65歳以上の世代も、支える側に回る必要がある、と記事には記載されています。

 

次元の異なる少子化対策

2030年までがラストチャンス

 

団塊ジュニア世代の子どもたちは、2030年ごろにかけて、出産適齢期を迎えます。

2000年代には、まだ出生数が100万人を超えており、この世代が30代の間に、出生減に歯止めをかけなければ、出生率反転のきっかけを失うと言われています。

 

若年人口が急激に減少する2030年代に入るまでが、こうした状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であり、2030年までに少子化トレンドを反転できなければ、我が国は、こうした人口減少を食い止められなくなり、持続的な経済成長の達成も困難となる。2030年までがラストチャンスであり、我が国の持てる力を総動員し、少子化対策と経済成長実現に不退転の決意で取り組まなければならない

令和5年子ども未来戦略方針より

 

「2030年までが、少子化トレンドを反転させるラストチャンスだ」ということで、「子ども未来戦略会議(次元の異なる少子化対策の実現のため)」として、現在、児童手当の拡充、出産などの経済的負担軽減、等、様々な少子化対策が打ち出されています。

 

本来、結婚・出産は、個人の自由であり、国家が要請するものではありません。

各人の生き方に、多様性が認められる方向へと、時代の流れは進むでしょう。

ただ、経済的理由で結婚・出産したくてもできない、現在の子育て世代の苦労を見ているため、結婚・出産する気にならない、といった風潮は、変えていかなければなりません。

子どもを持ちたい人が、安心して産み・育てられる社会となるように、早急な対策が必要でしょう。

そして、人口減少と高齢化によって働き手が不足しても、海外人材や高齢者が活躍し、さらにITやAIを活用することによって、新しい形の経済成長が実現していくことに、期待したいと思います。

 

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