年金額改定通知書
年金支払い通知書
年金を受けている方は、最近お手元に「年金額改定通知書」と「年金支払い通知書」が届いたかと思います。
6月15日は年金の振り込み日で、4月分と5月分の年金が振り込まれます。
4月から年金額が改定され、今回の通知書には、その改定後の年金額と、今後の支払額が記載されています。
2023年度の年金額は、新規裁定者は前年度から2.2%、既裁定者は1.9%の増額となりました。
その結果、老齢基礎年金の満額は、67歳以下の新規裁定者が79万5,000円(月額6万6,250円)、68歳以上の既裁定者が79万2,600円(月額6万6,050円)となります。
昨年度の老齢基礎年金満額は、月額6万4,816円でしたから、67歳以下が月1,434円、68歳以上が月1,234円の増額です。
また、厚生労働省の試算によると、夫婦二人分の老齢基礎年金を含む標準的な老齢厚生年金額は、月額224,482円※と、昨年の219,593円と比べて、4,889円の増額となりました。
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で、40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金満額)の給付水準
昭和31年4月2日以降生まれの方が、新規裁定者。
昭和31年4月1日以前生まれの方が、既裁定者です。
2通りの改定率
このように、今年度は年齢によって、改定率が2種類存在し、老齢基礎年金の満額も異なるという、大変珍しい現象が起きています。
ですが、本来、年金額の改定ルールは、新規裁定者と、それ以外の既裁定者では、違うルールを適用するという原則があります。
65歳に到達し、新たに年金が決定される際には、直近の賃金の動向を反映させるために、新規裁定者の改定には賃金変動率を用います。
それに対して、68歳以上の年金は、物価変動に連動させます。
これには、年金改定を賃金の伸びより抑えることで、年金財政を改善させる狙いがありました。
しかしながら、日本経済の長期低迷を受けて、賃金が伸びず、物価の伸びを下回るようになりました。
年金保険料は、現役世代が納めます。
そして保険料は、賃金に基づいて決まります。
賃金が伸びていないのに、物価に合わせて年金額を増やすことは、年金財政の悪化に繋がるのは明らかです。
支え手である現役世代の負担能力に応じた給付が、求められるわけです。
年金改正によるルールの変更
そのような観点から、2004年の改革で、物価よりも賃金の延びが少ない場合は、物価に合わせない特例措置が導入されました。(平成16年改正)
この年の改正は、平成16年改正と呼ばれ、保険料上限固定や、マクロ経済スライドの導入など、たくさんの改正が行われました。
「100年安心プラン」と謳われて、大きな話題になったことを、覚えていらっしゃる方も多いと思います。
しかしながら、その後、2021年度からは、特例措置がさらに拡大され、賃金が下がれば、物価に関わらず、年金もそれに合わせて下げるという仕組みが導入されました。
(下図参照)
現実に、令和3年度(2021年度)には、下図のケース2が、令和4年度(2022年度)には、ケース1が適用され、年金は賃金に合わせて減額されました。
令和2年度と平成31年度はケース3が適用され、賃金に合わせて微増。
平成30年度は改定前のケース2が適用されて、据え置き。
平成29年度は、改定前のケース1が適用されて、物価に合わせて減額されました。
このように、デフレ下で、しかも賃金が伸びない状況では、これらの特例が適用され、新規裁定者と既裁定者の改定率が、同じになるという状況が続いてきたのです。
ようやく本来のルールへ
マクロ経済スライドもフル適用
今年度、ようやく賃金と物価がプラスとなり、名目手取り賃金変動率が物価変動率を上回ったため、新規裁定者と既裁定者本来のルールが適用されることとなりました。
年金財政の健全化を図るための年金改正も、賃金が順調にアップしなければ、本来の機能が果たせません。
これまでのデフレ下では、マクロ経済スライドも発動されず、キャリーオーバーも溜まっていました。
今回は、その繰り越し分(キャリーオーバー分)を含めて、-0.6%もの調整が行われた結果、増額分も、物価の上昇に追いついていません。
今年度、その溜まっていたマクロ経済スライドのツケも解消したので、このままさらに賃上げが進めば、年年金額のアップも続き、同時に年金財政の健全化も進むのではないか、と期待したいところです。
今年度の年金額改定について、詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
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