これまでお話してきたように、遺族基礎年金は、18歳年度末までの子がいないと、受けることができません

 

厚生年金保険料は、遺族厚生年金に反映される可能性があります。

国民年金の保険料については、どうでしょう。

対象となる子がいなくて、老齢基礎年金を受ける前に亡くなってしまうと、それまでに掛けた保険料は、掛け捨てになってしまうのでしょうか。

 

自営業の期間が長く、国民年金を何年も掛け続けた配偶者を亡くした場合は、掛け捨ては納得できない感じがしますね。

 

でも、少しだけですが、年金や一時金が受け取れる制度があります。

それが、国民年金の独自制度である、寡婦年金死亡一時金です。

 

寡婦年金

寡婦年金は、名前のとおり、「寡婦(夫を亡くした妻)」が受け取る年金です。

ただし、受け取ることができるのは、60歳から65歳までの5年間のみです。

 

寡婦年金を受けられる条件

・亡くなった夫が、国民年金第1号被保険者として、保険料を納付した、または免除されていた期間が10年以上ある。

 (平成29年8月1日より前に死亡の場合は、25年以上の期間が必要でした。)

・夫が老齢基礎年金または、障害基礎年金を受け取ったことがない。

・夫と妻の婚姻関係が、10年以上継続している(事実婚も含む)。

・妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給していない。

 

国民年金第1号被保険者とは?

日本国内に居住する20歳~60歳までのすべての人は、国民年金に加入します。

第1号被保険者は、その中で、会社員(厚生年金に加入・第2号被保険者)でもなく、その被扶養配偶者(第3号被保険者)でもない方です。

 

寡婦年金の金額

寡婦年金の額=夫が受けられるはずであった老齢基礎年金(※)×3/4

※第1号被保険者だった期間についての額が対象

 

具体的な例で計算してみましょう。

会社員として、12ヵ月間、第2号被保険者だった後、すぐに起業して、ずっと第1号被保険者として国民年金に加入していた夫が、国民年金加入中に亡くなりました。

国民年金保険料は240月納付済みです。

妻との婚姻期間は10年以上、子どもはいないとします。

夫も妻も、まだ40代です。

妻は、いくらの寡婦年金を受け取ることができるでしょう。

 

厚生年金 12ヵ月

国民年金 240ヵ月

厚生年金期間も国民年金第2号被保険者なので、この夫の老齢基礎年金の計算のもとになる月数は、12月+240月です。

しかしながら、寡婦年金の場合は、第1号被保険者の期間についてしかカウントしませんので、この12ヵ月は含まれません。

240ヵ月のみということになります。

 

令和3年の金額であれば、

780,900円×240月/480月×3/4≒292,838円

ただし、この妻は、まだ40代ですので、寡婦年金もすぐには貰えません。

60歳から65歳の5年間の受給になり、金額もその時点の基礎年金額が基準となります。

5年間の受取総額は、令和3年度価格で約146万円。

20年間、国民年金保険料を払うと、400万円近くになりますので、5年間丸々受け取っても40%に満たない金額ですね。

 

ちなみに、もし、子がいて遺族基礎年金を受けていた場合も、寡婦年金の条件に合えば、遺族基礎年金の受け取りが終了し、60歳になってから、寡婦年金が受け取れます。

 

死亡一時金

最後に、死亡一時金についても取り上げてみましょう。

 

死亡一時金を受け取る条件

・第1号被保険者として国民年金保険料を納めた期間が36月以上の人が、年金を受けないまま死亡したとき

・対象者は、死亡した方と生計を同一にしていた、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番です。

・死亡した方が、老齢基礎年金、障害基礎年金のいずれも受け取っていない。

・遺族基礎年金を受け取ることができる遺族がいない。

 

死亡一時金の金額

保険料納付月数によって、12万円から32万円までの6段階。

420月以上でも32万円です。

保険料の一部免除を受けていた場合は、月数も払った割合分になります。

 

※寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらか一方の選択になります。

 

今回のまとめ

・年金を受ける前に亡くなると、掛け捨てになりがちな国民年金保険料を、少し取り戻すことができる、国民年金独自の制度を取り上げました。

 

・寡婦年金は、国民年金をある程度長くかけていた夫が亡くなった場合に、妻が自分の老齢基礎年金を受け取るまでの短い「つなぎ」のような存在なのです。

 

これまで、配偶者が亡くなった時に、遺族が受け取れる年金について、取り上げてきました。

やはり、在職中に亡くなった場合は、保障も手厚くなり、今後の生活の助けとなります。

自営業のご一家は、生命保険を増やすなどの備えが必要でしょう。