前々回と前回では、すでに老齢年金を受けている配偶者が亡くなった場合、それから、現役で在職中の配偶者が亡くなった場合の遺族年金について、見てきました。
今回は、それ以外のケース、老齢年金も貰っていない、在職中でもない配偶者が、亡くなった場合の遺族年金を取り上げます。
この場合、保険料をきちんと納めていたか、18歳年度末までの子がいるか、受給資格期間が25年あるかどうかが、ポイントとなります。
ざっくりとまとめると、下記の通りです。
✳️配偶者や子は、生計維持の条件を満たしているとします。
1. これまで、国民年金しか加入していない死亡者の場合
a. 18歳年度末までの子がいる
保険料納付要件を満たしている、または、保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、遺族基礎年金が受給できます。
b. 18歳年度末までの子がいない
遺族基礎年金も、遺族厚生年金も、受給できません。
2. これまでに、厚生年金保険に加入したことがある死亡者の場合
a. 18歳年度末までの子がいる
遺族基礎年金と、その上乗せとして、遺族厚生年金が受給できます。
・遺族基礎年金については、保険料納付要件を満たしているか、保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、受給できます。
・遺族厚生年金については、保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、受給できます。
b. 18歳年度末までの子がいない
保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、遺族厚生年金が受給できます。
おさらい
保険料納付要件とは?
死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間のうち、
納付済み+免除期間>被保険者期間の2/3以上
または
死亡日が含まれる月の前々月までの1年間に未納なし
(死亡者が65歳未満の場合)
死亡日の前日での納付状況を見るのは、亡くなってから保険料を納めてもダメだということです。2/3が微妙な場合は、納付日や被保険者期間などの、詳しい記録の確認が必要とされます。免除期間も納付要件のクリアに繋がりますので、未納にせず、きちんと手続きをしておく必要があります。
では、それぞれの場合について、詳しく見ていきましょう。
1. これまで、国民年金しか加入していない死亡者の場合
20歳から60歳までは、国民年金への加入が義務付けられています。
厚生年金保険に加入している会社員は、同時に国民年金に加入することとなります。
被保険者の種類は、第2号被保険者です。
そうでない場合は、国民年金のみに加入することになります。
種類は次の2種類。
第1号被保険者として、保険料を納付する。
厚生年金保険に加入する配偶者の被扶養者として、第3号被保険者となる。
第3号被保険者は、保険料が不要です。
これまで国民年金しか加入していなかった死亡者が、死亡時に下記の条件に当てはまる場合
・20歳から60歳までの国民年金の被保険者である(保険料納付要件あり)
または
・国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満(保険料納付要件あり)
または
・国民年金の保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上ある
a. 18歳年度末までの子がいる
遺族基礎年金が受給できます
遺族基礎年金の金額
子のある配偶者が受け取る時
遺族基礎年金の金額は、老齢基礎年金の満額+子の加算額です。
令和3年度の老齢基礎年金の満額は、780,900円
子の加算は、子が2人までは、各224,700円 3人目以降は各74,900円です。
たとえば、子が1人であれば、1,005,600円、2人であれば、1,230,300円です。
上の子が18歳年度末を迎えるたびに、1人ずつ子の人数が減っていきます。
子が全員、18歳年度末を迎えた時点で、配偶者の遺族基礎年金も終了します。
死亡者が国民年金しか加入していないと、遺族厚生年金は発生しませんから、配偶者の遺族年金は、これで終了です。
b. 18歳年度末までの子がいない
遺族年金を受け取ることはできません。
2. これまで、厚生年金保険に加入したことがある死亡者の場合
a. 18歳年度末までの子がいる
保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、
遺族基礎年金の上乗せとして、遺族厚生年金が受給できます。
子が全員18歳年度末を迎えて、遺族基礎年金が終了した後も、
配偶者は遺族厚生年金を受給できます。
b. 18歳年度末までの子がいない
保険料納付済み期間、免除期間、合算対象期間が25年以上あれば、
遺族厚生年金が受給できます。
遺族が夫の場合は、妻死亡時に55歳以上でなければ、
遺族厚生年金の権利が発生しません。
遺族厚生年金の金額
死亡者の記録に基づいて計算された老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
夫死亡時に妻が40歳以上の妻は、65歳まで中高齢の寡婦加算も受け取ることができます。
ただし、夫の厚生年金加入期間が20年以上の場合に限ります。
金額は、令和3年度で585,700円。
遺族基礎年金の3/4に当たります。
遺族基礎年金受給中は、支給が止められます。
在職中死亡との比較
死亡時にお勤めをしていれば、年金加入期間が短くて、25年の資格期間が無くても、保険料納付要件を満たしていれば、遺族厚生年金が受けられました。
しかも、月数は300日、つまり25年間と見なされましたし、妻の年齢の条件が合えば、厚生年金の期間が短くても、中高齢の寡婦加算が追加されました。
厚生年金保険という名の通り、在職中死亡には、保険の機能が大きいと言えるでしょう。
死亡時にお勤めをせず、国民年金加入中の場合は、そういった特典が無いため、遺族厚生年金が受け取れたとしても、厚生年金の加入期間が短いと、金額が低くなってしまいます。
厚生年金が20年以上なければ、中高齢の寡婦加算もつきません。
ただし、在職中の傷病がもとで、5年以内に死亡したと認められれば、在職中の死亡と同じ扱いになります。
また、障害厚生年金の1級か2級を受けていた方が亡くなった場合も、同様の特典があります。
国民年金加入期間が長い場合は、国民年金独自の給付である寡婦年金や死亡一時金に該当することもあります。
それは、次の回で取り上げることにしましょう。