年金生活になって心配なのは、配偶者に先立たれ、その結果、年金が減ってしまうことです。

そんな時、頼りになるのが遺族年金です。

自分は受け取れるのか、いくら貰えるのかを知っておくと、配偶者亡き後の生活設計が立てられますし、生命保険にどれくらい加入しておけば良いのか、などの目安にもなります。

 

正確な金額は、年金事務所に行けば確認できますが、生前に遺族年金の金額を知るためには、配偶者本人が行かない場合は、配偶者の委任状が必要なので、注意が必要です

将来、自分が受け取る年金といえども、配偶者に無断で遺族年金の見込み額を聞きに行くことはできません。

もとになるのは、配偶者の年金記録だからです。

 

もし、生前から、簡単に遺族年金の目安を知る方法があれば、便利ですね。

 

すでに老齢年金を受けている夫(妻)が、亡くなった場合

 

すでに老齢年金を受けている配偶者が亡くなった場合、遺族は遺族年金を受給できる可能性があり、また見込み額も比較的簡単に予測できます。

ただし、遺族年金が受給できるのは、死亡者の保険料納付済み期間保険料免除期間、および合算対象期間が、合わせて25年以上ある場合に限ります

 

従来、老齢年金を受けるには、上記期間が25年以上必要でした。

平成29年(2017年)8月からは、これが10年以上あれば、老齢年金を受けられるようになりました。でも、このケースに該当して老齢年金を受けていても、遺族年金は受けられません。

 

死亡者が老齢厚生年金を受けていると、

妻(夫)は遺族厚生年金を受けられる

 

亡くなった夫(妻)が老齢厚生年金を受けていて、18歳未満の子どもがいない場合、遺された妻(夫)が受け取れるのは遺族厚生年金です。

ただし、夫が遺された場合、夫は55歳以上であること、という年齢の縛りがあります。

夫婦が別居していても、生計維持関係が認められれば受けることができます。

また、籍を入れていなくても(内縁関係)、生計維持関係が認められれば受けることができます。ここが相続との大きな違いです。法定相続人になるには、戸籍上で関係が認められなければなりません。

 

生計維持関係があるとは?

 

遺族年金を受けるには、亡くなった当時、死亡した方によって生計を維持されていた方である必要があります。具体的には、死亡者と生計を同一にしていて、遺族の年収が850万円未満の方が該当します。

遺族の方が年収が高くても、生計が同じで、遺族の年収が条件に合えば、当てはまります。

また生計維持関係は、亡くなった当時のピンポイントで判断されるので、何十年も連れ添った夫婦でも、亡くなる前に離婚や別居をして、完全に生計が別になってしまったような場合は、遺族年金を受けることができません。

年収については、死亡当時850万円以上あっても、近い将来下がる見込みがあれば、認められます。

 

年金額を知りたい

 

遺族年金は、よく亡くなった方の年金の3/4と言われますが、これは正確な表現ではありません。

65歳以上の受給者は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建ての年金を受けていて、遺族年金に反映されるのは、このうち、老齢厚生年金の報酬比例部分だけです。

年金の振込額を見ても、老齢基礎年金と老齢厚生年金は合算して記載されているので、遺族年金の金額を割り出すには、年金額のうち、報酬比例部分がいくらなのか、判別する必要があります。

 

令和3年(2021年)6月に、日本年金機構から、はがき大の書類が送られてきたかと思います。

令和3年度は、前年比0.1%減額となったため、改定後の年金額を通知するものです。

下の図は、それを開いたところです。

 

 

この中の「国民年金・厚生年金保険 年金額改定通知書」という部分に、国民年金(基礎年金)、厚生年金保険の内訳が書かれています。

厚生年金の中の「基本額」を、4分の3倍(3/4)してみてください。

この金額が、遺族厚生年金のだいたいの目安になります。

 

 

ただし、この基本額の中には、厚生年金の一部である「経過的加算(差額加算)」も含まれているので、この金額が多い場合は、正確な金額になりません。

 

その他、年金が決定されたり、支給額が変更になった場合に送られてくる「年金決定通知書・支給額変更通知書」というA4判の書類の裏面にも、老齢厚生年金の基本年金額が記載されています(下図(6)番の(A)厚生年金の部分)。

これについても、考え方は同じです。

 

 

年金事務所で渡された老齢年金の見込み額

 

年金事務所や街角の年金センターに、老齢年金の相談や請求に行くと、見込み額を印字した紙を渡されます。

65歳になる前でも、節目である65歳時の老齢年金の見込みを出してもらえます。

 

ここで渡される見込み額には、年金額の内訳が、最も詳しく記載されています。

老齢厚生年金の額も、ただ基本額としてまとめるのではなく、報酬比例部分と差額加算の金額が、それぞれ、きちんと示されています。

ですから、この中の報酬比例部分の3/4が、最も正確な遺族厚生年金の金額です。

ただし、報酬や、お勤めする期間の予定が変わると、見込みの金額は変わってしまいます。

この紙が残っていたら、参考にしてみてください。

 

65歳未満の妻につく、中高齢の寡婦加算額

 

さらに、夫が死亡した時に妻が40歳以上65歳未満で、夫の厚生年金加入期間が20年以上の場合は、妻が65歳になるまで、中高齢の寡婦加算額が上乗せされます

金額は年585,700円。これは、満額の老齢基礎年金の約3/4に当たります。

ただし、これは妻が65歳になるまで。

それ以降は、妻自身が自分の老齢基礎年金を受け取れるから、ということでしょうか。この加算は無くなります。

昭和31年4月1日以前に生まれた妻は、経過的寡婦加算という加算を受け取れますが、金額は多くありません。

 

65歳未満は、自分の年金との選択

 

65歳未満は、1人1年金が原則です。

自分の年金を受けている場合は、選択になります。

両方、受け取ることはできません。

 

65歳以上は、自分の老齢厚生年金相当分がカット

 

65歳以上で、遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金を受け取る権利がある場合、老齢厚生年金が全額支給となり、遺族厚生年金がその分減額されます

つまり、遺族厚生年金よりも、自分の老齢厚生年金の方が高額の場合、遺族厚生年金は全額カットされ、受け取ることができません

 

また、65歳以上で自分の老齢厚生年金を受ける権利がある場合、遺族厚生年金の計算方法も変わります。

遺族厚生年金の2/3と自分の老齢厚生年金の1/2を合計した額の方が高ければ、その額が遺族厚生年金の額となります。

 

今回のまとめ

●老齢年金に比べて、何となく金額を聞きづらい遺族年金。

 生前から年金額を知るには、受給者の年金の内訳を知る必要があります。

 報酬比例部分の金額がわかれば、それを4分の3倍することで、年金額が求められます。

 お手持ちの書類を確認してみてください。

 

●この回では、すでに老齢厚生年金を受けている配偶者が死亡した場合の、遺族厚生年金について、解説しました。

今後は、現役の会社員が亡くなった場合や、18歳未満の子どもがいる場合の遺族基礎年金についても、考えてみたいと思います。