2021年度老齢基礎年金の満額は、780,900円

 

2021年度(令和3年度)の老齢基礎年金の金額は、年額780,900円、月額にすると、65,075円です(65歳から受け取り)。

ただし、これは、国民年金の保険料納付済み期間が、40年間(480ヵ月)の場合で、「満額の年金額」です。

老齢基礎年金は、納付した月数に応じた年金を受け取れる仕組みになっています

老齢基礎年金の計算式は、次の通りになります(保険料免除期間がない場合)。

 

年金額は、納付済み月数に比例して増加します

20歳~60歳の間の、第2号被保険者(厚生年金加入者)、第3号被保険者(被扶養配偶者)の期間も、保険料納付済み月数に含まれます。

 

つまり、国民年金の納付済み期間は、

1.第1号被保険者として、国民年金保険料を納めた期間。

 (免除を受けた場合は、免除の分だけ少なくなります)

2.第2号被保険者として、厚生年金に加入して厚生年金保険料を納めた期間。

 (老齢基礎年金に反映されるのは、20歳~60歳の期間)

3.第2号被保険者の被扶養者として、第3号被保険者となった期間。

の合計ということになります。

 

老齢基礎年金を満額にするには

 

それでは、老齢基礎年金を増やし、満額を目指すには、どうすれば良いでしょうか。

 

国民年金は、20歳になると、全員に加入が義務付けられます。

60歳までの40年、保険料をを納付したり、第2号被保険者や第3号被保険者期間を足して40年になると、満額になります。

ですが、国民年金の保険料は、けして安くはありません。

第2号被保険者の間は、保険料が給与から天引きされますし、被扶養者として第3号被保険者になれば、保険料の負担無しで、納付済み期間を増やせます。

それに比べて、第1号被保険者として、月々1万6,000円強の保険料を40年間納めるのは、けっこう大変です。

猶予制度や免除制度が使える場合は、こうした制度を利用して、負担を抑える場合もあったことでしょう。

 

よく見受けられるのが、学生時代は国民年金の納付猶予を受けていて、社会人になるまで納付していなかったケースでしょうか。

学生には、「学生納付特例制度」という制度があり、保険料の納付が猶予されます

猶予制度に申請すると、未納の場合と異なり、資格期間にカウントされますし、障害年金等の納付要件もクリアできます。

ただし、免除期間は、一部が年金に算入されるのに対して、猶予制度の場合は、将来の老齢年金額に算入されません。

 

猶予や免除を受けた期間については、10年以内なら「追納」と言って、保険料を納めることができます

未納した期間についても、2年以内なら納められます。

 

後から納められる期間を過ぎてしまったら、60歳~65歳までの間に 任意加入 することを検討しましょう。

納付月数が40年(480ヵ月)になるまで、保険料を納めることができます。

(ただし、この間に厚生年金に加入している場合は、任意加入できません。)

 

老齢基礎年金は、480月納めると、年額780,900円ですから、1ヵ月分を納付すると、約1,600円、年金が増えることになります。

保険料は、月額16,500円ぐらいなので、10年間、年金を受けると、だいたいもとが取れる計算になります。

保険料の納め方には、前納制度や口座振替など、お得になる制度がありますので、積極的に利用しましょう。

60歳になって、40年に足りない場合は、任意加入をして、少しでも満額に近づけるのがお勧めです。

 

 

年金加入期間の例

 

付加保険料も納めましょう

 

第1号被保険者として保険料を納める時や、任意加入をする時は、付加保険料も同時に納めると良いでしょう

付加保険料を納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされて受給できます。

付加保険料は、月額400円

付加年金の年金額は

200円×付加保険料納付月数  です。

 

たとえば、上の例で、第1号被保険者期間10年間と、任意加入期間2年間の計12年間、付加保険料を納めると、

保険料の総額は、

400円×12年×12月=57,600円

上乗せされる付加年金は、1年間で

200円×12年×12月=28,800円

つまり、2年間で、もとが取れる計算になります。

ささやかですが、これによって満額以上の老齢基礎年金を受けることができます。

ただし、国民年金の上乗せである「国民年金基金」に加入中の場合は、付加保険料を納付できません。

 

60歳以後に、厚生年金加入中の場合

 

それでは、60歳以降、厚生年金に加入している人は、どうなるでしょう。

老齢基礎年金を満額にすることは、できないのでしょうか。

厚生年金加入期間が老齢基礎年金に反映されるのは、20歳~60歳までの期間のみです。

また、同時に2つの制度には加入できないので、60歳以降に厚生年金に加入していると、国民年金の任意加入もできません。

つまり、60歳を過ぎて厚生年金に入りながら働いていても、老齢基礎年金は増えません

ですが、その代わりに、老齢厚生年金が増える仕組みがあります。

それが、老齢厚生年金の「経過的加算(差額加算)」部分です。

 

老齢厚生年金は、基本的に、「報酬比例」部分と「経過的加算」部分で構成されています。

「報酬比例」は、文字通り報酬に比例する年金です。

これまでの報酬や賞与を平均した額に、年数を掛けて計算します。

老齢厚生年金の本体部分とも言えるでしょう。

これに対して、「経過的加算」は、差額加算とも呼ばれ、計算上の差額によって発生する加算です。

数百円程度の金額の場合もありますが、20歳前や60歳以後に厚生年金の期間があれば、数万円になるケースもあります。

 

経過的加算とは、古い制度の名残りです。

昭和61年3月まで、厚生年金制度と国民年金制度は別々でした。

その頃、老後に受け取る厚生年金は、報酬に応じて支給される「報酬比例部分」と、加入した期間の長さ(上限あり)に応じて支給される「定額部分」との合計でした。

 

その後の年金制度改革により、国民年金と厚生年金が融合され、「定額部分」のうち、20歳から60歳までの部分が、「老齢基礎年金」として支給されるようになりました。

計算方法が老齢基礎年金と異なるため、定額部分の方が多くなります。

「経過的加算」は、以前の「定額部分」と「老齢基礎年金」の差額です。

 

経過的加算が多額になるのは、厚生年金に、20歳前や60歳以後に加入していた場合です。

老齢基礎年金は、20歳~60歳までの期間に対して支給されますが、厚生年金は、20歳未満でも加入できますし、最高は70歳までです。

つまり、以前は「定額部分」として支給されていた厚生年金加入期間のうち、老齢基礎年金に反映されない期間が出てきます。

経過的加算は、その20歳前、60歳以後の基礎年金に相当する額を、厚生年金から支給するものなのです。

ただし、厚生年金期間が480月までという上限があります。(昭和21年4月2日以降生まれの場合)

 

経過的加算イメージ

 

計算式は次のようになります。

(昭和21年4月2日以降生まれの場合)

 

A=1,628円×厚生年金加入月数(上限480月)

B=780,900円×厚生年金加入月数(20~60歳の期間)÷480

経過的加算=A-B

※1,628円は2021年度の定額単価 780,900円は2021年度の老齢基礎年金満額

 

つまり、60歳以後に厚生年金に加入しても老齢基礎年金は増えませんが、被保険者期間が480月までなら、Aの経過的加算を増やすことができるのです。

 

たとえば60歳から1年働いた場合、報酬に応じて報酬比例部分が増えると同時に、

1,628円×12月=19,536円

経過的加算額が増加します。

これは、同じ期間、国民年金を納付するより、高い金額になります。

そして、報酬の高さとは無関係ですので、60歳再雇用で報酬が減額された方にも有利な制度です。

 

終身で受け取ることができる公的年金。

少しでも多くしておくと、老後生活の下支えとして頼れるので、安心ですね。

 

今回のまとめ

●老齢基礎年金の納付済み月数が480月に満たず、老齢基礎年金が満額にならない場合は、60歳~65歳までの間に、上限480月まで任意加入して、保険料を納めることができます。

 

●月々400円の付加保険料を払うと、2年で、もとがとれる付加年金が、老齢基礎年金の上乗せとして受け取れます。

 

●60歳以後に、厚生年金に加入すると、被保険者期間480月までは、経過的加算を増やせます。20歳前に働いていた期間も同様です。