厚生年金の適用拡大に向けて

 

7月に入り、厚生年金の適用拡大について、政府の方針が公表されました。

 

厚生年金は、もともと、フルタイム労働者が対象で、パートタイマーなど、非正規労働者は対象になっていませんでした。

1週間の所定労働時間、および1月間の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3未満である者は、適用除外者

というのが基本です。

 

ところが、次第に非正規労働者が増えたことで、その老後の生活を保障する必要が高まったこと、被保険者数を増やして、財源を確保する必要もあったことから、2016年10月から

 

●1週間の所定労働時間が20時間以上

●月額賃金が8.8万円以上(いわゆる年間106万円)

●学生ではない

という条件で、短時間労働者にも対象が拡大されました。

 

この時点では

●1年以上の雇用が見込まれる

という条件もありましたが、この要件は2022年に撤廃され、2ヶ月以上の雇用見込みでクリアされることになりました。

 

さらに、事業所に勤める従業員数についても段階的に少なくなり、どんどん小さな会社にも適用されるようになっています。

○2016年10月~ 501人以上

○2022年10月~ 101人以上

○2024年10月~ 51人以上

 

近く、この企業規模要件が撤廃されることは、以前から予測されていましたが、いよいよ2024年7月の有識者懇談会で、政府の案が承認されました。

 

それによると、

●従業員数(企業規模)の条件を撤廃する

→ これによって、パート労働者約130万人が、新たに対象となります。

 

また、法人ではない「個人事業所」については、現在は、

常時5人以上の従業員を使用する

法に定められた業種(農林水産業、サービス業を除く17業種)

が、厚生年金に加入する事業所とされていますが、

この業種の条件が撤廃され、飲食店などの業種が追加されます。

 

その結果、5人以上の従業員を使用する個人事業所は、全業種が対象とな

ことになります。

→ これによって、約30万人が、新たに対象となると見込まれています。

 

厚生年金、健康保険に加入するメリット

就職氷河期世代に大きく

 

厚生年金に加入すると、将来受け取る年金が増えます

障害厚生年金や遺族厚生年金の対象となる可能性もあります。

また同時に健康保険にも加入することになりますので、ケガや病気で会社を休んだ場合、傷病手当金が受け取れます。

保険料は会社が半分持ってくれますので、自分で国民年金や国民健康保険に入るよりも、コスパが良いというメリットもあります。

 

しかしながら、それでもやはり、配偶者の扶養に入っていたい、自分で保険料を払いたくないという方は、所定労働時間を短くする等の就業調整をするかもしれません。

また、企業規模が小さくなるにつれ、会社が半分持つ保険料は、大きな負担として伸し掛かることになります。

 

ですが、バブル崩壊後の1990~2000年代の雇用環境が厳しい時代に、就職活動を行った世代(就職氷河期世代)には、不本意ながら非正規雇用にならざるを得なかった方々が多くいます。

 

勤務時間の関係で、会社の厚生年金、健康保険に入れず、国民年金や国民健康保険にご自身で加入されているお勤めの方がいらっしゃるのです。

中には、国民年金を未納しているケースもあるかもしれません。

 

国民年金の保険料は、収入に関係なく2024年で月額16,980円、年額で20万円以上かかります。

しかも、これを収めても、受け取れるのは、国民年金だけです。

また、国民健康保険料についても、100万円ぐらいの収入でも年間8万円以上かかります。(新宿区40~65歳の場合、減額措置適用前)

そして、国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。

 

それに対して、厚生年金の適用拡大によって、会社の厚生年金と、協会けんぽ等に入ることができれば、会社が保険料を半分持ってくれるので、100万円ぐらいの収入の場合、年間保険料は、合計で15万円程度で済み、しかも将来は厚生年金も受け取ることもできるのです。

 

やむを得ず非正規雇用となっている方々にとって、今後も厚生年金加入への道が広がることは、老後の安心に結び付く切実なものと言えるでしょう。

 

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