使いづらいと評判の「法定後見制度」が改正される見通しとなりました

2026年4月4日に、改正案が閣議決定され、同日に国会に提出されました。

この改正案が成立すると、2028年度中にも新制度が運用される運びとなります。

 

成年後見制度とは

 

2000年に導入された制度。

本人の判断能力が不十分である場合に、家庭裁判所によって選任された者が、本人を支援する制度です。

高齢化を見据え、介護保険法と両輪をなすものとされ、介護保険法と同じ2000年に制定されましたが、利用者は、2024年末時点でおよそ25万人と、介護保険に比べ、全く活用が広がっていないのが現状です。

使い勝手の悪さを改善する必要が、指摘されてきましたが、いよいよ制度が改正されることになりました。

 

成年後見制度を利用すると、判断能力が低下した本人に代わって、後見人が法律行為を締結したり、不利益な行為を取り消すことができます。

 

法改正で何が変わるのか

 

◉「補助」に一本化される

〇現在 判断能力に応じて

   保護の必要性が高い順に

  「後見」「補佐」「補助」

   の三つの類型があります。

後見人の「代理権」「同意権」「取消権」は、それぞれの類型で異なり、「後見」類型では全般的に付与され、それ以外の類型では、申し立てにより付与されるという違いがあります。

 

〇改正後は?

判断能力にかかわらず、「補助」に一本化

代理権や同意権、取消権の範囲は、本人が必要とする特定の項目ごとに、家裁が認定します。

 

〇何が改善される?

現状では、「後見」相当の場合、後見人が包括的な代理権を持つために、「生活のすべてが管理され、本人の意思が尊重されない、自由度が少ない」という難点があります。

これが「補助」に一本化されることで、

「必要な場面、必要な範囲に限って支援内容を個別に設計できる」ようになります。

 

◉制度の利用を途中で終えることができる

〇現在 終身利用が原則

 利用を始めると、本人が亡くなるか、判断能力が回復しない限り、利用をやめることができません。

 例えば遺産分けの時に後見制度が必要となり、利用を始めた場合などでも、遺産分けが終わった後も、利用を続ける必要があります。

 その結果、後見人に対する報酬が、終身にわたり必要となることが、利用をためらう大きな一因となっていました。

 特に弁護士や司法書士など、専門職に支払う報酬は高額になりがちで、財産額によっては、月に2万円~6万円になる場合もあります。

 それが、ご本人が生きている限り続くのですから、利用をためらう気持ちもよくわかります。

 

〇改正後は?

「補助」類型に一本化され、本人が必要とする特定の事項ごとに、家裁によって認定され、必要が無くなれば、終了できるようになります。

 例えば、遺産分割協議が必要なのに、ご本人が軽度の認知症で、それに対応できない場合、遺産分割のみで後見制度を利用して、遺産分けが決まったら、後見制度を終了することができるようになります。

 その後、例えば自宅を売却する際にのみ後見制度を利用するなど、制度のスポット利用ができるようになるわけです。

 

〇何が改善される?

終身利用という縛りが無くなり、必要な時に専門家の後見が受けられるようになるということで、より使い勝手の良い制度となることが期待されます。

 

◉後見人の交代がしやすくなる

〇現在 一度選任されると、重大な事情がない限り、原則的に交代は認められません

 

交代できるのは以下の場合に限られます。

・後見人からの「辞任」の申し出

後見人が高齢や病気で事務処理が困難だったり、転居や家庭の事情等、正当な理由によって後見人を続けられない場合のみ、自ら辞任を申し出ることができます。

 

・利用者側から「解任」を求める

後見人に横領などの不正行為や、後見事務を怠るなど、著しく不適当な行いがある場合、利用者が解任を求めると、家裁によって解任することができます。

ただし、解任された後見人は、その後、後見人に就くことができません(欠格事由)。

 

つまり「あまりに厳格で、本人のためにならない」「対応に不満」という程度の理由では、家庭裁判所は交代を認めません。

これまでは、後見人が財産保護を重視するあまり、家族が本人のために必要とする出費も認めない、あまり見守りに来てくれない、など、本人の利益が損なわれる場合でも、この程度では著しい不正行為とはみなされないため、なかなか解任ができませんでした。

 

〇改正後は?

解任事由として、「本人の利益のために特に必要があるとき」という項目が、新しく追加されました。

この場合は、解任されても、後見人の欠格事由には該当しません。

 

〇何が改善される?

その結果、後見人に明確な義務違反がなくても、家庭裁判所が本人の利益の観点から必要と判断した時は、解任が認められる余地が設けられることになりました。

 

改正後の見通し

 

一度始めたらやめられない、なかなか交代もできない、費用が高額となる、など、マイナス面が目立っていた制度ですが、必要がなくなったらやめられる、交代も柔軟にできるようになるため、より使いやすい制度になることが期待されます。

2025年、団塊の世代が、全員75歳以上の後期高齢者となりました。

支援が必要な人も、しばらくは増加の一途をたどることが見込まれる現在、今回の改正は、使いにくい後見制度を抜本的に見直すものと言えます。

不動産の売却や相続手続きなど、専門家の助けが必要な手続きのためだけに制度を利用する、といった、スポット的な利用も可能となりそうです。

 

改正前よりフレキシブルとなる制度を、高齢者ご本人のためになるように、上手に利用したいものです。

 

成年後見制度の使いにくさについては、過去ログにまとめてあります。

よろしければ、これも併せてお読みください。