いまから54年前の1972年に東北大学(齋藤實教授)で発明された「窒化鉄磁石」が現在、新しい世界革命を起こそうとしている。
東北大学は、世界を変革する独創技術・製品を90以上輩出している。
これは、世界一である。
ワシが発明したシンラタービン(Shinla Turbine、米国特許US8678749B2)もその一つである。
この記事は、1972年の東北大学齋藤實教授(当時)の「窒化鉄磁石」を取り上げている。
電気自動車(EV)時代に向けた新しい革命である。
日本政府が莫大な資金を注ぎ込んで開発のスピードを上げて取り組んでほしい。
(c)harbeman260401
Deep thinking yields imagination
ーーーーーSmartnewsを引用する。
[素材] レアアースの呪縛を解く「窒化鉄磁石」の静かな革命:東北大学の夢が、EV時代の覇権を握るまで
葦原 翔(あしはら かける)
はじめに:私たちの足元に眠る「最強」の種
スマートフォンのバイブレーション、電気自動車(EV)の力強い加速、そしてリビングで静かに回るエアコンのファン。私たちの便利な生活を裏側で支えているのは、目には見えない「磁石」の力です。
今、この磁石の世界で、ある種の「革命」が起きようとしているのをご存知でしょうか。
それも、ハイテクな新元素を発見したという話ではありません。どこにでもある「鉄」と、私たちが吸っている「空気(窒素)」から、世界最強の磁石を作ろうという試みです。
「窒化鉄磁石」。
この名前を聞いてピンとくる方は、かなりの技術通かもしれません。かつて、日本の科学者が発見し、あまりの性能の高さに世界を驚かせながらも、「実用化は不可能だ」とさえ囁かれた「夢の材料」です。
それが今、長い沈黙を破り、私たちの生活を根底から変えるゲームチェンジャーとして、いよいよ表舞台に姿を現そうとしています。
今日は、この「鉄と空気の錬金術」が歩んできた数奇な運命と、私たちが直面しているレアアースという名の地政学的な呪縛、そして数年後に迫った社会実装のリアルについて、少し深く掘り下げてみようと思います。
第一章:ネオジム磁石という「黄金の椅子」に潜む影
まず、現在の王者の話をしましょう。現代社会において「最強の磁石」といえば、ネオジム磁石(ネオジム・鉄・ホウ素)です。
1980年代に日本で発明されたこの磁石は、それまでの常識を覆す磁力を持ち、電子機器の小型化や省エネ化に計り知れない貢献をしてきました。
しかし、この「最強の王者」には、あまりにも大きな弱点が二つありました。
一つは、「レアアース(希土類元素)」への依存です。 ネオジム磁石を作るには、その名の通りネオジム、そして耐熱性を高めるためのジスプロシウムといったレアアースが不可欠です 。
問題は、これらの元素の産出地が著しく偏っていることです。特定の国が供給の鍵を握る構造は、単なるコストの問題を超え、国際情勢に左右される「供給リスク」という爆弾を常に抱えていることを意味します 。
もう一つは、環境負荷です。
レアアースの採掘や精練プロセスでは、膨大なエネルギーを消費し、深刻な環境汚染を引き起こすケースも少なくありません。
「クリーンなエネルギー」を標榜するEVや風力発電機を作るために、その裏側で環境を壊し、特定の国に依存し続ける。このパラドックス(逆説)こそが、現代の製造業が抱える最大のジレンマでした。
そこで白羽の矢が立ったのが、窒化鉄Fe16N2という存在です。
第二章:1972年、東北大学から始まった「伝説」
窒化鉄磁石の物語は、1972年にまで遡ります。東北大学の高橋實教授(当時)が、ある特殊な構造を持つ窒化鉄Fe16N2が、理論上、ネオジム磁石を遥かに凌駕する世界最高の磁化値を叩き出すことを提唱したのが始まりです 。
その理論上の数値は、なんと約2.9テスラ 。材料レベルでも、既存の最強磁石を軽々と超えるポテンシャルを秘めていました 。
材料は「鉄」と「窒素」だけ 。 鉄は地球上に溢れるほどあり、窒素は空気の約8割を占めています。つまり、資源の枯渇を心配する必要もなければ、特定の国からの供給を請う必要もない。まさに「究極のサステナブル磁石」です 。
しかし、ここからが苦難の道のりでした。
このFe16N2という物質、とにかく「気難しい」のです。
最大の壁は、その「構造の不安定さ」にありました 。 この物質は「準安定相」と呼ばれる極めてデリケートな状態で存在しており、ちょっと熱を加えると、すぐに磁力の弱い別の組成(Fe4Nなど)に分解されてしまいます 。具体的には、200℃から300℃程度の熱でその魔法が解けてしまうのです 。
EVのモーター内部は、激しい回転と電流によって高温になります。そんな場所で、熱に弱い磁石は使えません。さらに、薄膜や粉末の状態で作ることはできても、それを実用的な「磁石の塊(バルク)」にするプロセスが極めて困難でした 。
あまりの難易度に、一時は「理論だけの幻」とまで言われ、研究の表舞台から消えかけた時期もありました。しかし、日本の材料技術の底流では、この夢を諦めない研究者たちの情熱が静かに燃え続けていたのです 。
第三章:なぜ「今」、実用化が加速しているのか
幻だったはずの窒化鉄磁石が、なぜ今、急激に現実味を帯びてきたのでしょうか。そこには、三つの大きな変化があります。
1. 計算科学とAIの進化 かつては「職人の勘」に頼っていた材料開発が、今ではスーパーコンピュータやAIを用いたシミュレーション(材料インフォマティクス)によって劇的に加速しています。どのような条件で、どのような添加物を加えれば、窒化鉄の結晶構造を安定化させられるのか。その最適解を導き出すスピードが、以前とは比較にならないほど速まったのです 。
2. ナノテクノロジーによる制御 窒化鉄をナノレベルの粒子として制御し、特殊な成形法で熱分解を抑えながら固める技術が進歩しました 。これにより、これまでは困難だった「塊(バルク)」としての製造に光が見えてきました 。
3. 世界的な脱レアアースの潮流 これが最も大きな外圧かもしれません。経済安全保障の観点から、欧米諸国は「中国依存のレアアース供給網」からの脱却を国策として進めています。米国のNiron Magnetics社のようなスタートアップが巨額の資金を集め、強烈なスピードで開発を推進している背景には、こうした政治的な要請があります 。
今、世界は「研究室の中の真理」を求めているのではなく、「市場で使える武器」としての窒化鉄磁石を切望しているのです。
第四章:キッチンから宇宙へ——窒化鉄の多才な素顔
ここで少し視点を変えてみましょう。実は窒化鉄という素材、私たちの意外に身近なところで既に「実力」を発揮しています。
その代表例が、調理器具です。 「窒化鉄フライパン」という名前を聞いたことはありませんか? 鉄の表面に窒素を拡散浸透させる「窒化加工」を施したこのフライパンは、プロの料理人からも高い支持を得ています 。
窒化加工を施すと、鉄の強度は最大で5倍にまで跳ね上がります 。さらに、耐摩耗性が強化され、非常に錆びにくくなるという特性を持っています 。
鉄フライパンの宿命であった「錆びやすさ」や「手入れの難しさ」を克服しつつ、鉄本来の「高温調理に適している」というメリットは維持する 。
この実用性は、磁石としての窒化鉄が持つポテンシャルの、いわば「硬派な一面」です。
また、航空機の部品や自動車の歯車など、過酷な摩擦や熱にさらされる工業製品にも、この窒化加工技術は欠かせません 。
私たちの生活を「物理的な強さ」で支えてきた窒化鉄が、今度は「磁気的な強さ」で社会を支えようとしている。この連続性は、非常に興味深いものがあります。
第五章:カウントダウン——「その日」はいつ来るのか
さて、皆さんが最も気になるのは「いつ、私たちの手元に届くのか」という点でしょう。最新のロードマップを紐解くと、驚くほど近い未来が見えてきます。
実用化のフェーズは、現在すでに「研究室」を飛び出し、「パイロット生産」の段階に入っています 。
- 2024年〜2025年(サンプル供給期) 現在、米国のNiron Magnetics社などが、実際に自動車メーカー(GMやボルボなど)や家電メーカーに対して、サンプルの供給を開始しています 。すでに「作れるかどうか」の段階は終わり、「実際の製品に組み込んでどう動くか」をテストする段階にあるのです。
- 2026年〜2027年(初期商用化・量産開始) 米国ミネソタ州などでは、すでにフルスケールの製造工場の建設が進んでいます 。計画通りに進めば、2027年までには、窒化鉄磁石が商業ベースで生産され、市場に流通し始めるでしょう 。
- 2030年(普及期) 年産10,000トンを超えるような大規模な供給体制が整い、いよいよネオジム磁石に代わる主要な選択肢として、EVのモーターや風力発電機に本格的に採用される時期です 。
もちろん、すべての製品が一気に置き換わるわけではありません。 スピーカーや家電用の小型モーター、一部の防衛機器といった、比較的高温になりにくい、あるいは構造的に工夫がしやすい分野であれば、今後2〜3年以内に採用製品が登場するはずです 。
一方で、最も過酷な環境である「EVのメインモーター」への本格採用には、さらなる耐熱性の改善が必要とされており、これには5年〜10年程度のスパンを見込んでおくのが現実的でしょう 。
(以下略)
ーーーーーーーーーー