【採用試験】防衛省自衛隊・一般曹候補生採用試験 | 英語の音韻論と、英語の発音と、ときどき日常。

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このブログは、筆者の大学・大学院での主専攻である英語音韻論や英語音声学を主とし、英語学、言語学、日常のこと、私の興味のあること等を纏めたものである。

筆者は2024年3月に大学院博士前期課程を修了。

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今回は一般曹候補生採用試験について、お話ししたいと思います。

 

  一般曹候補生について

 

一般曹候補生採用試験とは、読んで字のごとく、「一般曹候補生」を採用するための試験です。

 

先日、「自衛官候補生採用試験」についてのブログ記事を投稿しました。

 

 

実は自衛官候補生も、一般曹候補生も、自衛官としての最初の階級は2等陸士・2等海士・2等空士なのです。

 

また、自衛官として求められる能力、仕事ぶりも同じです。現場の最前線で活躍するのが「士」や「曹」といった階級の方々で、それを統率するのが、「尉官」、「佐官」、「将官」といった幹部の方になります。

 

これをみると、自衛官候補生も、一般曹候補生も、あまり変わらないようにみえます。では、どこが違うのでしょうか。

 

世間一般では、「自衛官候補生は任期制、一般曹候補生は非任期制(=定年制)」という認識が強いようです。

 

確かに、自衛官候補生は、前期教育修了後、任期制自衛官として働き、所定の年月が過ぎると、契約更新 or 昇任試験 or 退職(転職)のいずれかの道をとります。

 

まぁ、“任期制”が最大の特徴でしょうから、任期を勤めあげて転職される方は非常に多いように感じます(任期制自衛官の退職率は、何れも公表されていません)。

 

一方で、一般曹候補生は、将来的に「曹」として、現場の最前線で長く活躍すると共に、専門的なスキルを身につけ、それを活かす(e.g., 防衛教官、班長)ことが求められますニコニコ

 

“長く”ですから、そもそも防衛省自衛隊側は、一般曹候補生で入隊した自衛官が、特別な理由を除き、例えば「訓練が厳しいからやめたい」等の理由で退職することを想定していないんですね。

 

一刻も早く立派な「曹」になってほしいわけですから、教官は厳しく指導しますし、それに耐えられず逃げだしそうな自衛官がいたら、かならず引き止めます。

 

尤も、自衛官候補生のブログ記事でも言及しましたが、一般曹候補生であっても、定年制自衛官の1番下の階級である3等陸曹、3等海曹、3等空曹に、内部試験に合格して昇任することができないと、一定の年数が経過したタイミングでそれとなく退職を勧告されますえーん

 

3等陸曹、3等海曹、3等空曹への昇任は、初任陸・海・空曹課程の修了をもって正式に決定するので、厳密には初任陸・海・空曹課程入校の合格を勝ち取ることができれば、大丈夫ということになります(通称: 3曹選抜試験)。

 

※「それとなく」と書いたのは、名目上はクビにすることができないからです。一応、依願退職になるみたいですね。どこまで信頼性があるかは分かりませんが、Wikipediaでは、3曹選抜試験の受験資格をもった10人の同期(同自衛隊)がいたとして、最終的に初任曹課程に合格できるのは平均7人くらいで、残りは依願退職が関の山だそうですえーん

 

ですので、自衛官候補生は「任期制自衛官」であり、一般曹候補生は「定年制自衛官」という説明も、厳密に言えばウソになります。『一般曹候補生は将来必ず「曹」になれる!』とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、自動的に「曹」に昇任するわけではないので、3曹選抜試験の合格を勝ち取らない限り、いつまでも「士」のままになりますえーんえーん

 

とはいいつつ、そんな十何年も「士」のままでいさせるかといわれたら、流石にそんなことはないと思いますニヤリ

 

現に、いつまでたっても初任陸・海・空曹課程の試験に受からない自衛官がいたとして、最終的には温情で合格させるか、温情で転職をアドバイスする(?)という話を聞いたことがあります。

 

3曹選抜試験は、一般曹候補生として入隊後、最速で2年9か月後に受験可能です照れ

 

 

  応募資格

 

自衛官は若い人しかなれないと思ったそこのあなた。

 

実は、今の一般曹候補生は、18歳以上33歳未満の方を応募資格の対象としています。

 

自衛官候補生と同じなんですね…わたしも受験しようと思った時に調べててびっくりしましたびっくり

 

 

  試験概要

 

試験は大きく分けて3項目に分かれています。

 

1.学科試験

2.面接

3.身体検査

 

このあたりは自衛官候補生採用試験と同じですね。

 

自衛官候補生採用試験と違うのは、一次試験や二次試験という概念があり、一次試験に合格しないと、二次試験を受験できない、という点でしょうか。大抵、一次試験実施日より概ね一か月後に二次試験が行われます。二次試験は平日も行われます。

 

また、一般曹候補生採用試験は1年で計3回行われています。高校卒業見込みの方は、第2回一般曹候補生採用試験より受験可能です。

 

※ 受験資格の「18歳以上」は、採用予定月の1日現在の話であり、たとえば採用予定月が2024年4月であれば、2024年4月1日に18歳以上であれば、高校3年生でもOKです。

 

 

  学科試験について

 

学科試験は、次の3つで構成されています。

 

1.適性検査

2.国語・数学・英語のテスト

3.作文

 

(1)適性検査は、2つのテストで構成されています。試験時間は2つ併せて20分です。

 

内容は一般企業の採用試験で行われている性格診断テストに似たようなものですが、なかには「あなたは夜眠れないことがありますか?」「あなたは自分自身を傷つけてしまうことがありますか?」など、あきらかに「はい」を選ぶと不合格になるような設問が用意されています。

 

勿論、適性検査なので正直に答えるべきです。でないと、入隊後に痛い目に遭います。いわゆる企業と求職者の性格面でのマッチングだと思ってください。

 

※ 一部ブログで、一般曹候補生の適性検査はクレペリン検査であるという記述がありますが、一般曹候補生採用試験においてはクレペリン検査は行いません。クレペリン検査を行うのは入隊後です。

 

(2)国語・数学・英語のテストは、全問解答しなければなりません。試験時間は120分、問題のレベルは高校卒業程度です。

 

以下のURLより、防衛省が公開している一般曹候補生採用試験の過去問を閲覧することができます。

https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/examination/kakomon/index.html

 

また、高校卒業程度といっても、しっかりと対策をしていないと、普通に落ちますガーン

 

防衛省のホームページでは過去問を公開していますが、著作権に違反する所や模範解答は公開されていないので、過去問集を買うことをおすすめします。

 

おすすめは防衛協力会が執筆している「2023年度版 最近10か年 一般曹候補生対策問題集」です。

 

 

まずは、上記のような過去問で傾向を掴み、出題頻度の高い範囲から勉強していった上で、時間があれば模擬問題集にもチャレンジしてみましょうニヤリ

 

 

学科試験は「簡易Web試験」とかいうよく分からん奴

 

一般曹候補生採用試験の一次試験は、「簡易Web試験」方式で行われます。

 

これは、試験会場に自身のウェアラブル端末(e.g., スマートフォン、タブレット、パソコン)を持参し、指定された座席でウェアラブル端末を使って受験するというモノです。

 

分かりやすく言えば、会場受験型のCBT(Computer-based Testing)でしょうか。

 

ここで注意しておくことは、防衛省自衛隊側はウェアラブル端末を用意していないので、ウェアラブル端末を忘れないように持ってくるという点です。

 

監視体制は、ウェアラブル端末のカメラを使った撮影+AIによる監視+自衛官による見回りだったと思います。

 

なお、数学の問題については、計算用紙を使った計算が認められていますが、あまり画面から視線を外しすぎると、カンニングを疑われてしまうかもしれません。勿論、数学のテスト以外でそのような目線を外す行為をすると、即刻疑われるでしょう。

 

 

  面接

 

一次試験は、実施日の概ね二週間後に合格発表が行われます。合格者にのみ、一次試験合格証および二次試験の案内が来るので、それを持って二次試験を受けに行きましょう。

 

自衛官候補生採用試験と同じく、二次試験では、面接と身体検査が同日に行われます。

 

面接ですが、試験案内と一緒にお手元に届く「面接カード」を基準に進むものだと思っていてください。

 

面接カードの内容は、「志望動機」、「入隊の意志」、「自衛隊の受験について、まわりに話しているか」、「自衛隊の受験についての家族の同意」、「希望勤務年限」、「遠隔地勤務の制限」、「他の企業や公務員との相対的な志望順位」、「学校におけるクラブ活動・生徒会活動について」、「団体生活に対する考え方」、「特技・資格」、「自己PR」です。

 

このうち、「学校におけるクラブ活動・生徒会活動について」、「特技・資格」、「自己PR」欄については記述式であり、それ以外の項目は選択式あるいは選択・記述混同式となっています。

 

まぁ、ここは個人の自由なので、面接カードに嘘八百を書くかどうかは私の知ったことではないですが、いくら自衛隊の試験の中でも受かりやすい部類にあるとはいえ、「入隊の意志」や「志望順位」は高い方が勿論いいです。

 

「団体生活に対する考え方」は、部活の遠征や寮生活を経験していない人でも、「自分はやり遂げる自信があるから大丈夫だ!」と答えればOKですニコニコ 面接カードにも未経験者の欄が設けられています。

 

面接自体は大体20分前後であり、入退室と入ってからの流れは予めその場にいる自衛官や事務官の方が教えてくれますので、その通りにやれば大丈夫です。

 

面接官は2人ないし3人、全員が制服組の自衛官であることが多いです(つまり、事務官がいない)。制服を着用しているので、少々プレッシャーを感じるかもしれませんが、圧迫面接があるとか、そういったことはほぼありませんのでご安心を。

 

「自分は自衛隊に入って、こういう事がしたいんだ。国や国民を守りたいんだ。」という強い意志をぶつけてください。

 

 

  身体検査

 

面接と同時進行で行われるのが身体検査です。

 

身体検査は同基地内の医務棟、あるいは同基地が管轄している厚生施設で実施されます。面接控室から徒歩またはマイクロバスで移動です。

 

主な項目は以下の通りです。

 

○ 身長・体重

○ 胸部レントゲン

○ 視力・色覚

○ 聴力

○ 歯科検診

○ 血圧

○ 尿検査

○ 内科検診

○ 運動機能検査

○ 関節運動の検査及び皮膚の確認

 

このうち、運動機能検査と内科検診については、上下半そでTシャツ半ズボンで受けることになります。また、面倒くさいので、身体検査の最初から最後まで上下半そでTシャツ半ズボンで受ける場合もありますが、そこは面接の進み具合次第です。

 

上手く面接⇒身体検査と進めばいいですが、場合によっては身体検査⇒面接⇒身体検査のパタンもあり得ますので、その場合は、どちらかの身体検査の時に着替えることになります。

 

※もし、身体検査と面接の会場が別であり、移動がマイクロバスとかであれば、一定数の受験者の面接が終わってから全員で身体検査へ移動、あるいはその逆が考えられます。

 

「皮膚の確認」は、いわゆる自傷行為がないかどうかの確認です。

 

「運動機能検査」は、屈伸、伸脚、片足立ち、手首足首を曲げる運動などで、手足が正常に動くがどうかチェックします。

 

「内科検診」では、試験案内と一緒にお手元に届く「身体検査問診票」とこれまでの身体検査を基に行われます。「身体検査問診票」は、これまでのけがや病歴、入院歴、手術歴、薬の服用(現在および過去)、精神状態、乗り物酔いの有無などを記載します。

 

身体検査問診票については、これはもう馬鹿正直にすべて書いてください。もし一般曹候補生採用試験に合格したにも拘わず、身体検査問診票に偽りのことを書いて後に発覚すれば、その合格が取り消されます

 

また、内科検診において、海上自衛隊の採用試験受験者は鼓膜に穴が開いていないか(鼓膜穿孔の有無)を確認されます。

 

因みに、自衛隊の採用試験には、なんと「体力試験」がありません。

 

 

  最後に

 

一般曹候補生採用試験は、自衛官候補生採用試験と比べると難しいですが、しっかりと勉強や対策を行えば、合格は十分に狙えます。昔は誰だって受験すれば受かるといわれていましたが、今はそうではありません。そのようなうわさやデマに惑わされず、頑張って勉強や対策を行いましょう。

 

また、勉強や対策をしっかりと行ったにも拘らず、不合格になることも、可能性としてもちろんあります。何がダメだったかは、後で防衛省に開示請求を行うことができます(お金と時間はかかりますが)。

 

意外と盲点なのが、身体検査に引っかかるというモノです。体力試験がない分、教育や訓練についていける身体であるかどうかを厳しく見極めているのでしょう。

 

身体検査は、一項目でも引っかかれば、一発アウトだと思っててくださいびっくり

 

身体検査の主な合格基準や、不合格疾病の一覧については、以下のURLからご確認いただけます。確認しておいた方が良いでしょう。

 

https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/about/physical-examination/index.html

 

また、一般曹候補生採用試験は自衛官候補生採用試験とちがって、学力試験でも不出来な者は容赦なく落とされるので、注意が必要です。