子ども達が一番喜ぶことと言えば…「試合」。
練習をしていて、練習終わりの時間が近づいてくると、必ず私の前に現れる子がいます。
「コーチ、今日は、試合はしませんか?」
「試合がしたい」…それは競技者としては必須の要素です。
チーム内での紅白戦なので、対外試合ではないにせよ、やっぱりゲームライクを望んでいるのは間違いありません。
ただ、その試合をしたいという思いは、何を目的にしているのか。
私は常日頃、子ども達に言っているのは…「試合に出るだけじゃダメ」だということ。
試合に出るだけで“満足”していれば、おのずと「課題」を持ってコートに立つ選手や、出番を常にうかがっている選手に、追いつき、追い越されてしまうということ。
成長著しい小学生の時期においては、この“追いつき、追い越せ”は、あっという間に起こってしまいます。
遅れて入団してきた子や、まだバスケ歴の浅い子が、メキメキと上達する姿を見ればわかると思いますが、目指すもの、追い越す相手が明確にあれば、その子にとって分かり易い「指標」が出き、練習での意識、何より「質」が違ってきます。
要は、目指すものがある者は強いということです。
試合に出るだけで満足するのは、その時点で成長の速度を緩めてしまう麻薬のようなもので、やはり、試合に出て、コートに立って…「何をするか」…ここが重要。
練習で与えられた課題を、根気よく身に着けるまで繰り返す…そのハビット(習慣)を常に実践している者が、最後に“笑う”。
普段の練習での「姿勢」を観ていれば、おのずとその子の成長過程が予想できます。
「楽しい」という感覚の質の違い。
何をもって楽しいと感じるのかは、人それぞれ。
ただ、チームとしてコートに立つ以上は、それなりの覚悟と実践を伴わなくては、チームにも、そして周りの仲間にも迷惑をかけてしまうことがあります。
そうなってから、その子の意識や質を変えに行くには、相当な労力を要します。
なので、そうなる前に、常に言い続け、言い聞かせることが大切だと思っています。
独りよがりのプレーが、チームの“的(まと)”から外れていることを放置してやることほど、可哀そうなことはない…なので、そういった子に叱ったり、罰をあたえたりする前に、“布石を打つ”ということはとても大切なことなんです。
変わるキッカケを与えること、変わるチャンスを与えること、そして、変わろうとする瞬間を逃さないこと。
指導者として、その子の成長をあきらめるということは、単に「見捨てた」ということ。
最後まで手を引く覚悟の中には、時に突き放す勇気も必要であり、常にその子との“駆け引き”をしている時間、これも指導者には求められるのでしょうね。