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<関東上空>

『間もなく新横須賀に到着だ!寝ぼけた体を起こしてくれよお客さん方』

パイロットの声が響きわたる。無論、乗客が寝ていないことは承知している。

「....だそうだシンジくんにジェームズくん。降り支度をするとしよう。」

無精髭を擦りながら加持が寝台から飛び降りる。もっとも寝台といっても荷物の上に毛布を敷いたり、ハンモックを吊るしてある程度のものだが。

「やっと煙草が吸える」

そう言ってポケットの中の煙草を確かめる。

「支度って....荷物もほとんど無いのにか....?」

寝心地の悪い寝台の上で身体を伸ばしながらジェームズが言った。

「ま、そりゃそうだ。支部の荷物は後から別便で来るしな」

「明日…じゃなくて今日ですか…時計を直さないといけないな…今日は久しぶりにまともな所で眠れそうですね」

欠伸をこらえながらシンジが言う。

思えばここ数週間まともに眠った覚えがない。

耐えられない訳ではないがやはり柔らかいマトモな寝床で眠りたいと思うのが人情だ。

おまけに…赤い染みや黒い染みに彩られた自分の黒い戦闘服を見下ろす。

さすがに清潔とは言い難い。

「病院のベッドに送られるのは願い下げだけどな。

後、 油断するなよシンジくんにジェームズ。アスカは随分と格闘技の腕があがったそうだからな。最近はクラリスもアスカと一緒に訓練してるらしい」

加持がそういうとシンジとジェームズの顔色が変わる。

「「な、なんでそこでアスカ(クラリス)の名前が出て来るんですか?」」

「照れることないじゃないか」

加持の顔がにやける。

狭い床の上で腕立て伏せをしていたハンサムな白人の金髪の青年が起きあがった。

腕を組み少し考え込んでから周囲に訪ねる。

「アスカとクラリスっていや、確かセカンドチルドレンの女の子と今話題の歌姫だったかな?」

ハンモックでクロスワードをしていた黒髪の東洋系女性が追い打ちを掛ける。

「あら、シンジとジェームズの恋人なの?」

「「ち、違いますよ!」」

ついむきになるシンジとジェームズ。

「あのジェームズとシンジがここまで動揺するんだ、まちがいないな。」

「あたしとは遊びだったのね、ジェームズ」

そういいながら女性は両手で顔を覆って泣く真似をする。

「な、何言ってるんだよ!エイダ!!」

「おや、ジェームズくん。ジャネットとはそういう仲だったのか」

「違うに決まってるでしょ!」

からかわれているのはわかっているがついムキになる自分がうらめしい。

同じようにからかわれても軽く受け流すであろう加持がとどめをさす。

「安心しろジェームズくん。ちゃんとクラリスに殺される前に救出してあげるから。

 ま、俺の見立てでは全治1ヶ月というところだな」

「…加持さん」

ジェームズはがっくりと肩を落とした。

「ねーねージェームズとシンジの彼女ってプリティーなの?」

興味深げにエイダ・ウォンが聞いた。

「ん?…そうだな。数年前は超がつく美少女だったからな、今はさぞかし美人に…」

「…だから彼女じゃないですってば」

ぼそりと呟くジェームズ。

「じゃ、紹介してくれ」

レオン・S・ケネディが唐突に言った。

「レ、レオン?」

「安心しろ、お前達の友達だ、悲しませるような事はしないさ。ただちょっと楽しい夢を…まあ待てジェームズ、シンジ、人間話せばわかる。俺達は仲間だろ?な、落ち着け。とりあえずその銃口をだな」

「全てを疑え、でしょ」

レオンの眉間に黒光りするワルサーの銃口を突きつけ殺気を隠さずにジェームズとシンジは言った。

「あらレオン。教え子の成長を身をもって確認できるなんて幸せねぇ」

「ああうらやましいな」

エイダと加持がうんうんとうなづく。

「すまんジェームズ俺が悪かった!だから命だけは助けてくれ!」

どこで覚えたのか銃を突きつけられたままレオンが土下座する。

「いえ、わかっていただければいいんです」

何事もなかったようにすました顔で銃を懐にしまうジェームズとシンジ。

「ち、いつのまにか俺より手が早くなりや
がって」

命拾いしたレオンがぼやいた。

「ま、お前さんは別なものに手を出すのが早いからな。そっち方面じゃさすがのジェームズくんやシンジもかなわないさ」

「Mr.リョウジには負けるよ」

「そういうのを五十歩百歩って言うんですよ。…あ」

シンジの表情が変わる。

「どうしたのシンジ」

「いえ、病院送りになるのは僕じゃなくて加持さんの方じゃないかと」

「ど、どういうことかなシンジくん?」

加持の顔色が変わる。

「おーおーリョウジが動揺している、明日は雪か?」

「まさにオリエンタルマジックね」

シンジはかつての自分の保護者に似た目つきで続ける。

「だって、ミサトさんにまだ連絡してないんでしょう?生きてるって」

「どーいうことなのシンジ?」

「加持さんは消されそうになって死んだ振りをしたんです。まぁ、訓練の手前、第一支部とSISと国連は仕方ないとしても、本部では知ってるのは司令と副司令くらいだけのはずです」

「ほーほー」

「で、恋人のミサトさんにも何にも言ってなかったから、ミサトさんは加持さんが死んだと思ってるんです」

「あらあらシンジやジェームズよりひどいわね」

「で、その恋人って腕の方は?」

「仮にもネルフの作戦部長を勤めているんですよ?それにゲヒルン時代にしっかり訓練を受けているはずですし…」

「あーそれは駄目ね、ご愁傷様リョウジ」

「リョウジもバカだな。せっかく生き延びてたのに今日が命日か」

「シンジ、お葬式にはよんでね」

加持は脂汗を流しながらシンジに言った。

「あー、シンジくん?」

「駄目ですよ、加持さん。ミサトさん毎晩泣いてたんですから。責任とってください」

この点については妥協しないシンジとジェームズ。

「エイダ。どっちのほうが重傷か賭けないか?俺はリョウジの方」

「あら、年頃の女の子って怖いのよ~。じゃ、あたしはシンジとジェームズね」

4人を乗せた統合軍の輸送機はゆっくりと新横須賀へ降りていった。

                     第三新東京市
                       <葛城家>

葛城家では遅い夕食を取っていた。

三人の美女の足下ではペンペンが嬉しそうに魚をくわえている。
 

かつての同居人達がいなくなって一時は廃墟となりかけた(一時は実際廃墟だったとある少女は証言している)葛城家だったが、恥も外聞もかなぐり捨てて周囲の助力を請い、血のにじむような努力を重ねた結果、人が住める環境、美味しいと人に言ってもらえる食生活を手に入れていた。もっとも、そのほとんどは年下の二人の被保護者(主にクラリス)の力によるものが大きいのだが。

「…ねぇミサト」

後かたづけをしていたアスカとクラリスはビールを飲んでいる保護者に声を掛けた。

「なーに?」

「…なにか私達に隠し事してない?」

「ぶっ!ゲホッゲホッ…な、なんのことかしらね?」

(…まったく最近鋭くなってきたわねぇ)

吹き出した口元を拭きながらミサトは思った。
 

リツコによれば、

『もともとアスカとクラリスは優秀な子だし、同居してればお互いに能力に磨きがかかるのは当然ね。ミサトの野性的な勘が受け継がれたのよ。もっともさすがにミサトの料理の腕までは…』だそうである。
 

「そ、そういえば今日の料理もおいしかったわよ。やっぱりアスカとクラリスって天才よね~」

「…怪しいわね」

ジト目のアスカ。

実際アスカの料理の腕はあがっている。かつての同居人達やクラリスには及ばないものの最近はリツコが幼いユイを連れて教えを請いに来るほどである。おそらく学校やネルフに費やす時間を料理の勉強に使えば一流の料理人として暮らしていけるだろう。

「ま、いいわ。じゃ、あたしもお風呂入るね」

「あたしも部屋に戻るわ」

「ほーい」

追求を諦めたアスカとクラリスがバスルームに消えるとミサトは胸をなで下ろした。