日曜８時のＴＢＳドラマにはまりつつあります。
回を重ねるごとに視聴率もアップし、２０％を超えてます。
「やられたら、やり返す。倍返しだ！」という決めゼリフも流行りかけてるようですし、小学生の間では、「半沢走り」なる走り方が流行っているそうです。
ドラマをご覧になっている方も多いでしょうから、内容については触れませんが、とにかく大企業の理不尽な行いに、正々堂々と立ち向かい、正論を吐く姿に共感する人が多いのでしょう。
実際には、上司にあれだけ言いたいことを言える人は少ないでしょうし、そんなことをしたら社内での立場どころか、リストラの対象になってしまいます・・・、ってワイドショーのコメンテーターが話してましたけど、実は、私はかつてサラリーマン時代に、半沢直樹ほどではなくとも、それに近いことをやってました。
以前は、某映画会社の関連子会社に勤務しており、半沢直樹のような金融機関ほどのいやらしさはなかったのですが、バブルの終わりごろにはイケイケドンドンの営業をしていましたし、バブルがはじけた後には、売掛金の回収などで走り回ったりという経験もあります。取り込み詐欺にもあいました。
その会社では中間管理職という立場にまでなり、上司と部下の板挟みも経験しました。
詳しいことはここではとても書ききれませんが、それなりに理不尽な目にも遭いました。上司に反論したこともありました。何でもかんでも上司に逆らっていたわけではありませんが、自分の中でボトムラインを明確にしていたために、例えそれが会社命令であっても、一線を越えることはありませんでした。
ボトムラインというのは、いうなれば自分の価値観のベースになるものです。どんなことでもやってやろうじゃないかという気構えはありますが、ある一定の基準以下のことは何があっても絶対に手を出さないという覚悟ももっていました。
同僚たちからは、ズケズケとモノが言えるいい性格だといわれましたし、正直言って私の事を煙たがっている上司もいました。だからといって、会社に居づらくなったり、上司からのいじめに遭うこともありませんでした。もしかすると、単にラッキーだったのかもしれません。また、本当にいい上司に恵まれていたのかもしれません。ただ、上司に逆らうときは、クビになっても構わないという覚悟と、できるだけ論理的に議論ができるように努力していました。
もしかすると、場合によっては私は職を失っていたかもしれません。それでも、自分の価値観に従うことを選んだのです。バブルはとっくに弾けていましたし、年齢も３０代後半、子どもも二人いてクビになったらたちまち生活が不安定になる状態でした。それでも、自分を信じ、正しいと思うことをかたくなに守ったのです。
こんなふうに書くと、恰好をつけた嫌なオヤジだと思われるかもしれませんが、実のところ、私にとっては、自分を守るための唯一の、精一杯の手段だったにすぎません。強い男でも、できる男でもありません。どちらかというと気の弱い男です。上司に逆らうことはパワーのいることですが、自分のボトムラインがはっきりと見えていた私にとっては、それを守ることが一番楽な方法だとわかっていたのです。
半沢直樹は、上司にきっちりとモノを言い、部下をしっかりと守り、仕事を完璧にこなすスーパーマンです。街角のインタビューでは、上司をやり込めたり、債務者を追い詰めていくところが、見ていて気持ちがいい、スッキリする、と多くの方が答えていました。
私が、半沢直樹に近いことをしてきたといっても、それは理不尽な会社の要求には逆らう、といったところだけで、部下が私のことをどう思っていたか（私なりには部下を守ってきたつもりですが）はわかりませんし、取り込み詐欺の売掛金を回収できたわけでもありません。
誰もが、半沢直樹にはなれないでしょうが、半沢直樹の心意気には学ぶことがあると思います。同時に、自分の価値観を再認識し、ボトムラインを見極めることが人生をよりよく生きる術だと思います。そして、そうすることが結果的には、一番ラクなことだと思います。
人から言われるまま、その場しのぎで自分の価値観にそぐわないことをしていると、いつか心が不安定になってきます。自分で自分を否定することにつながるからです。
うつ病が増えてきているのも、そんなところに原因があるのかもしれません。人は誰でも強くなりたいものですが、誰もが強くなれるわけではありません。ただ、自分を守る手段はだれにでもあるのです。その手段を、自分を信じて使うことが大切なことなのです。