B社との「共同経営型シェアードサービス」の推進に当たって、最も注力したのは人材に対する取り組みです。それは、シェアードサービスの成功の鍵は人材の活性化だと考えたからです。



多くの企業でのシェアードサービスセンターは子会社と言ってもグループ内の一部門と見做され、人材も親会社からの出向が多いようです。したがって、社員もローテーションの一貫として特定の時期のみシェアードサービスセンターに属しているという人さえいるかもしれません。


つまり社員も「就業意識」より「就社意識」の方が強いように思われます。


そこで「共同経営型シェアードサービス」を効果的にするためには、B社ではたらく人材に対してプロ意識の徹底がベースになると考えました。



そこで手がけたのは、シェアードサービスにふさわしい人事制度の構築です。従来は、シェアードサービスセンターでも親会社の人事制度に則った制度でした。そのため、人事制度も必ずしもシェアードサービスに必要な専門性などの能力によるものではありませんでした。そのため個人の過去の実績も現在の給与には大きな位置づけを占めていました。つまり、個人の給与水準も、A社の他部門に必要な保有能力を満たした水準かもしれませんが、シェアードサービス運営に必要な保有能力から導き出されたものではありませんでした。


そこで、まずシェアードサービス運営に当たって必要な保有能力に基づき新たな人事制度を作り上げたのです。(詳細は以前に述べたシェアードサービスの「人材育成」の稿を改めて参照ください。)



一方では、B社の社員一人一人が持つシェアードサービスに保有する能力を棚卸しました。

そして、新たな人事制度に基づく能力レベルにB社の社員一人一人をプロットしたのでした。このようにして、能力に基づく給与水準を改めて算出すると現在の人事制度に基づく給与水準では、個人別には大きな差が出てきたのです。大きく給与水準がアップした人がある一方、多きくダウンした人もいました。ただし、全体としては給与水準をダウンさせることはしませんでした。ダウンさせると、いくら人事制度の高邁な理念を掲げても社員には給与水準をダウンさせるための手立てだと感じられてしまうからです。人事制度の構築は決してリストラの手段ではなく社員一人一人の能力開発と士気の高揚にあったからです。



もう一つの人事制度の変更は、「就業意識」の徹底をはかるため、A社からB社への出向からB社社員化(A社からB社への転属)です。もちろん先に掲げたB社独自の人事制度を作り専門性の向上で給与水準のアップなど制度的な補完措置が前提になったことを言うまでもありません。


それでも、B社社員の葛藤やB社役員の社員一人一人への対話など大変な苦労ものがあったのです。しかしお互いの理解で乗り越え新たな展開に一歩踏み出したのです。